増えるアニメ作品、「新規参入組」が狙う秘策 プレイヤーが増加中、優勝劣敗も見え始めた
とはいえ、参入して3年、まだ大ヒット作品は見当たらない。棚田氏は「ヒットを生み出すのは非常に大変。資金回収の難しさも実感している」と打ち明ける。そもそもアニメは準備期間等も含めれば、放送まで2年から3年程度かかるものがほとんど。さらに、ゲーム化は大化けの可能性もあるが、開発投資が大きくのしかかる。ヒット作を生み出すまでは、各社とも我慢の時期が続く。
「アニメ広告」という新ジャンル
もう1つ注目すべき動きが、「アニメ広告」だ。大手通信会社KDDIの人気CMシリーズ「三太郎」。人気俳優たちが出演することで知られるが、今回それがアニメになった。
新型コロナウイルスの感染拡大で、KDDIはCMの撮影を自粛。その中で「アニメという新しい表現手法を選んだ」(宣伝部)。評判は上々で、視聴者の塗り絵をアニメ広告にするキャンペーンも実施するなど、「実写版とは異なる魅力を伝えられた」(同)。
広告にアニメを使うことは、数年前からのトレンドだ。大手広告代理店の電通は2018年に「電通ジャパニメーションスタジオ」を設立。国内のアニメ制作会社と連携し、アニメ広告の制作に乗り出している。
同スタジオの武藤隆史代表は「アニメは実写よりも圧倒的に演出の自由度が高い。日常のちょっとした瞬間もドラマチックに描ける」とアニメ広告の魅力を話す。実写と比べてメリットもある。未来の世界を実写で描こうとすれば、CGなどを駆使する必要があるが、アニメなら制作費を抑えられる。また、アニメには、タレントの不祥事といったリスクも小さい。
最近では自動車タイヤ「ダンロップ」を展開する住友ゴム工業やトラック大手の日野自動車などがアニメ広告を採用している。ダンロップのアニメ広告では、商品を前面に打ち出さず、ストーリー性を重視。SNS上では視聴者から、「映画1本を見終わった感覚になる」「広告なのに最後まで見てしまった」といった好意的な評価が寄せられた。
「アニメ広告を作るのではなく、ブランドの思想を込めたオリジナルアニメ作品を作ることが重要だ。商品が前面に出ると、アニメに入り込めなくなる。純粋にアニメを見てもらい、企業を好きになってもらうことを目指した」(同)
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