老いた親から相続したい「お金以外」の重要資産 目に見えないところに大事なことがある
「食事の作法」も相続である
以前、テレビを見ていたら若いカップルが語り合っている番組がありました。
神田伯山を相続した、いまもっとも注目されている若い講釈師と、滝沢カレンという女性が、ジョークをまじえて語り合っていたのですが、なにかの話題でラーメンがスタジオに運ばれてきたのです。それを二人が味見するという趣向でした。
箸をとる際に、二人がごく自然にちょっと手を合わせるしぐさをしました。それがほとんど無意識の動作と見える自然な反応だったので、なるほど、と感心したのです。
食事の前に手を合わせるのは、昔からの私たちの習慣です。特に宗教的な形式というより、家庭での当たり前の行儀でした。しかし、いまはそんな行儀もすたれて、ほとんど見かけなくなってしまったのですが、若い二人の出演者が、ひょいとごく自然に手を合わせて箸をとったのを見て、感慨を覚えました。フィジカルなアクションが相続されていると感じたのです。
おそらく子どものころから家庭でそんなしぐさが行われていたのでしょう。さりげないしぐさだけに、感じるところが多かったのです。
そのときふと思ったのは、親や家から相続するのは、財産ばかりではないのだな、ということでした。土地や、株や、貯金などを、身内で相続するのは当然のことです。