小池氏、「都知事選完勝」でも視界不良の事情 消え失せる「小池熱」、都議会運営に難題も

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宝塚歌劇団の人気男役から小池氏の秘書に転じた天風氏を山田氏が大差で退け、他3区の補選もすべて自民候補が制したことで、自民都連は「来年の都議選での第1党奪還のメドがついた」と勢いづく。小池氏には、再選後の都議会運営での都民ファースト頼みからの脱却という課題が突き付けられた格好だ。

今回の選挙結果について、自民党内では「安倍晋三首相による秋口解散断行への追い風になる」(閣僚経験者)との見方も出る。コロナ禍が続く巨大都市・東京での選挙が滞りなく実施されたことで、「コロナが選挙の障害にはならなかった」(選挙アナリスト)。加えて、「街頭演説や集会を抑制せざるをえない選挙戦は、現職が圧倒的に有利なことがわかった」(自民選対)からだ。

広がる「初の女性首相狙い」の観測

今回の都知事選で主要野党の足並みの乱れが際立ったこともあり、野党の態勢が整わない中での秋口解散なら、「多くの自民現職に有利」(同)との読みだ。ただ、「小池氏はコロナ対策が評価されたが、安倍首相は迷走批判で内閣支持率も低下したまま。条件はまったく違う」(自民幹部)との慎重論も根強い。

その一方で、永田町では今回の小池氏完勝で、改めて「国政復帰して初の女性首相を狙うのでは」(自民幹部)との臆測も広がる。5日の会見で国政復帰への意欲を聞かれると、小池氏は「その質問そのものが疑問に思う」とかわしたが、「『任期全うが当然』と答えない辺りに、意欲を感じる」(同)との声も出る。

そのシナリオは、「コロナ禍を抑え込んで東京五輪開催も実現し、その直後に勇退して中央政界復帰」とされるが、「そんなに都合よくいくはずがない」(自民長老)と冷笑する向きも多い。自民党の一部では、小池氏は国政復帰の際に二階俊博自民党幹事長の率いる二階派入りし、同派の総裁候補になるとの秘策もささやかれるが、「そんな身勝手な変心は、支持を失うだけ」(閣僚経験者)との見方が支配的だ。

その小池氏は6日午前、当選あいさつもかねて首相官邸で安倍首相と会談した。安倍首相は小池氏の再選を祝うとともに、東京五輪の開催と成功に向けて協力していくことを確認。東京でのコロナ対策でも「感染拡大防止に緊密に連携していく」ことで一致した。

コロナ禍を利用して完勝した小池氏と、コロナ対応に苦闘しながら解散時期を模索する安倍首相。今後もコロナと五輪という2大政治テーマがどう絡み合っていくのか、今後の政局展開を占うカギの1つとなりそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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