小池氏、「都知事選完勝」でも視界不良の事情 消え失せる「小池熱」、都議会運営に難題も

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コロナ禍の影響で小池氏は街頭に出ず、他候補も活動を制限された選挙戦だった。報道量も前回から激減し、選挙戦は最後まで盛り上がらなかった。ただ、その中でも投票率は55%と、前回選挙を4.73ポイント下回っただけ。これは、都民の外出自粛が続く中で投票日が曇りという好条件が投票率の底上げにつながったと指摘されている。

午後8時の開票開始と同時に、各メディアが一斉に小池氏当確を報じた。多くの関係者は「告示の時点で小池氏の勝利が決まっていた」(選挙アナリスト)と口をそろえる。小池氏はコロナ対応優先を理由にオンライン選挙を徹底し、恒例の候補者討論会も一部を除いて参加を断るという「雲隠れ戦術」に徹した。

テレビ各局は主役抜きの選挙報道はしにくく、小池氏は連日コロナ対応でのテレビ出演を続けた。開票翌日の6日朝のテレビ各局の番組はほとんどが熊本などでの豪雨災害をトップに取り上げ、都知事選は2番手以下。4年前の小池フィーバーの熱気は消え失せていた。

東京五輪開催にも黄信号

作戦通り完勝した小池氏は5日夜、都内での会見でコロナ第2波に対応するための疾病対策センター(CDC)の東京版創設や、3000億円規模の補正予算編成などを打ち出した。東京五輪・パラリンピック開催を前提に「それぞれの競技に適した簡素化などを、これから詰めていく」と得意げに語った。

しかし、都内では感染が急拡大しており、知事としてコロナ対策へ批判や不安がささやかれている。世界的にもコロナ感染は拡大しており、東京五輪の開催にも黄信号が灯っている。

小池氏が4年前に公約した「7つのゼロ」はほとんど実現せず、コロナや五輪以外で都民生活に直結する新たな政策目標も明確ではない。今後、コロナの第2波が襲来して五輪中止ともなれば、中央政界への復帰どころか、責任を取っての途中辞任も余儀なくされかねない。

そうした中、中央政界が注目したのは都知事選に合わせて5日に投開票された都議補選だ。特に、各党がそれぞれ支援する新顔5人が出馬して1議席を争った北区選挙区は、「各党の勢いを占う重要な戦い」となった。同区では自民前区議の山田加奈子氏が、立憲民主が推した元区議で『筆談ホステス』の著者の斉藤里恵氏や、小池知事の支持母体の都民ファーストの会の天風いぶき氏らを破って当選した。

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