相鉄・東急直通線、工事の真上で連続陥没の不安 6月に2回も発生、トンネル工事との関連は?

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現時点ではトンネル工事と陥没の関連はわかっていないが、地域住民らが不安視するのは陥没事故の再発だ。6月12日以降、新横浜トンネルの工事は中断しているが、陥没は2カ所ともすでに掘削が完了した場所の上で起きた。

鉄道・運輸機構は対策について「シールドトンネルの工事による地表面の陥没は通常は起こらないが、当面の対策として詳細な地質調査を行うとともに、地表面の監視を強化している」と説明する。調査を踏まえて検討委員会で審議し、原因の解明を進める方針だ。

もう1つ懸念されるのは、トンネル工事の中断による相鉄・東急直通線の開業時期への影響だ。同機構は「今は(陥没の)原因究明を行っている段階で、現時点でお話しできることはない」とする。

同線は各区間で工事が進んでおり、今年2月には羽沢横浜国大駅―新横浜駅間の「羽沢トンネル」掘進が完了。同機構のウェブサイトに掲載された「土木工事着手率」は100%だ。新横浜駅の部分についても「地下の躯体の土木工事はおおむね完了している」という。

過去に開業時期延期も

ただ、相鉄・東急直通線は過去に開業予定時期を延期した経緯がある。同機構などは2016年8月、開業時期を当初予定の2019年4月から2022年度下期に変更すると発表。延期の理由は、用地取得の遅れや新綱島地区の地質が想定よりも軟弱だったことなどだった。

陥没現場付近は車線規制され、道路は渋滞していた=6月30日(記者撮影)

相鉄・東急直通線の環境影響評価書には「計画路線周辺にはN値(地盤の強度を表す指標の1つ)5以下を示す比較的軟らかい地盤を厚く確認できる地点もあり、特に新横浜駅及び綱島駅周辺で多く確認できます」との記述があり、綱島周辺とともに新横浜駅周辺の地盤の状況に言及している。

工事中断による影響だけでなく、詳細な調査によって新横浜トンネル付近でも新たに地質の問題などが見つかれば、開業に影響する可能性がないとは言い切れないだろう。

相次いで発生したトンネル工事の上の道路陥没。予定通りの開業はもちろん再発防止のためにも、工事との関連を含めた早急な原因の解明が重要だ。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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