社長が語る、乗客激減「いすみ鉄道」の生きる道 新型コロナで利用者は減ったが希望もある

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――経営者として、鉄道会社の経営をどう考えますか?

小湊鉄道(右)との連携も模索する(筆者撮影)

やりがいも手ごたえもあります。「変えられるのはよそ者だからでしょ」と言われたこともありますが、私はこの鉄道がある限りいすみ鉄道と付き合うつもりです。私の前職であるタクシー会社の経営と異なり、同業者と協力しやすいですし、学べることも多いです。

ほかの鉄道会社の社長さんとも前向きな話をしています。千葉県を盛り上げるためにも、小湊鉄道さん、銚子電鉄さんとの連携も進めたい。費用がかかるので今はまだ夢ですが、小湊鉄道さんとの直通も一緒に盛り上げたいです。

――コロナが収束したら、何に重点を置きますか。

コロナがなかったとしても人口減少など、避けられない問題を考えなければなりません。いすみ鉄道が生き残るためには、観光列車などもっと多くの企画を行う必要があります。地域の足というだけではなく、地域のシンボルになるように少しずつ舵を取らなければならない。だから、車や自転車で当地に来る人も大切にしたい。自転車を列車に乗せて乗車できるようにしようと思っています。

急行列車にもいろいろな意見はありましたが、何とか残す算段を付け、7月の復活に向けて準備しています。

乗客が「気持ちをリセット」できる鉄道に

――急行列車の魅力をどう考えますか?

国鉄形気動車を残すことで、この地域に「昭和」が残ります。風情や人情まで含めて残さなければいけません。今は風情や人情はいらない時代かもしれませんが、それらが昭和の面白さなので、そのテイストを楽しんでいただきたい。首都圏の煩雑さに疲れた人が、ときどき来て、気持ちをリセットしてもらえるような、そんな鉄道会社にしたいのです。

1人ではできないので、みんなの力を借りて進めていく必要があります。まだまだ道半ばです。

安藤 昌季 乗り物ライター

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あんどう・まさき / Masaki Andou

1973年、東京都生まれ。編集プロダクション「スタジオサウスサンド」代表で、通勤電車の座席から寝台まで広く関心を持つ「座席鉄」。「鉄道ぴあ」「旅と鉄道」「AERA.dot」「週刊日本刀」などで、乗り物・歴史関係の執筆を広く手掛けるほか、鉄道キャラクター企画、ゲームデザイン、イベント主催なども。著書は「教えてあげる諸葛孔明」(角川ソフィア文庫)、「夢の新幹線 ものしり学習帳」(玄光社)「日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き」(天夢人)

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