米上場の微博、中国政府への対応が課題 ユーザー4億人の一方、検閲やライバルの脅威
[サンフランシスコ/香港 17日 ロイター] - 中国ポータルサイト運営大手の新浪傘下で投稿サイトを運営する微博(ウェイボー)が17日、ソーシャルメディア企業として米ナスダック市場にデビューを果たした。
その数時間前には北京で、著名なウェイボーのユーザーで中国系米国人のベンチャー・キャピタリスト、チャールズ・シュー氏が違う意味で「デビュー」を祝った。懲役8カ月の刑で服役していたシュー氏が釈放されたのだ。
2つの出来事のタイミングは偶然の一致に過ぎないが、上海に拠点を置く微博にとっての根本的な試練を浮き彫りにした。すなわち、中国で驚異的なマイクロブログの伸びによって発展を遂げた微博が、国際的なソーシャルメディア企業の一員として定着できるかどうかだ。
シュー氏は買春容疑で逮捕されたが、逮捕の発端は昨年秋の政府によるネット上の政府抗議活動や政治評論家の主張の取り締まり着手だった。微博は海外の金融市場から温かく迎えられたが、国内では検閲をめぐって当局と対立し、「中国版ツイッター」として知られる同社が政府の介入で脅かされるという疑念が生じている。
過去1年間はネット上で影響力を持つ評論家の身柄拘束が相次ぎ、そのおかげで微博のユーザー数が減少した可能性があるとする調査結果も出ている。
英テレグラフ紙と上海の華東師範大学が1月に発表した調査によると、政府がコンテンツ投稿の際に実名の表示をユーザーに義務付けたことを受けて、微博の投稿数は2012年のピークに比べ70%も減少したという。
一方で微博が当局に開示した文書によると、月間アクティブユーザー数は8四半期連続の増加となり、1─3月期は前期比34%増の1億4400万人に達した。
ハイテク企業の上場
現時点でグロース株を追い求める投資家の意欲は衰えていない。17日のナスダック市場で微博の株価は公募価格の17ドルを19%上回り、ことしの米国におけるハイテク株の上場としては8番目の好成績となった。
コミュニケーション論が専門で中国のインターネット問題を研究しているMin Jiangノースカロライナ大教授は「微博は2人の上司の要求に応えなければならない。1人は中国共産党で、もう1人は株主だ」と指摘する。
Jiang教授によると、フェイスブックやツイッターの力で「アラブの春」と呼ばれる抗議運動が中東各地に広がったことを受けて、中国政府は12年初めにソーシャルメディアに実名で投稿するよう義務付けており、昨年9月には「デマの流布」を禁じる新法を施行するなど、一連の政策を実施している。
その上でJiang教授は「特にアラブの春以降、トップダウン方式による政策の実施が行われ、ユーザー数に大きな影響を与えている」と指摘した。
中国政府の高官は、世界最大の人口を有する中国において悪意あるうわさやネット上の名誉棄損行為は社会秩序の安定のために封じ込める必要があると主張している。
微博が上場前に配布した投資家向け目論見書では、オンライン上の言論を規制する新法をリスク要因に挙げ、「新たな司法的解釈が施行されると、当社のプラットフォームにおける通信トラフィックに重大な悪影響を及ぼし、ユーザーのコンテンツ創造を妨げる恐れがある」と指摘した。
微博の広報担当者のマシュー・リンドバーグ氏は17日、検閲に関連する質問には即座に回答できないとしている。
競争の激化
中国のインターネット利用人口は6億人以上になり、表面上は微博には途方もないチャンスがあるように見える。
しかし、微博の健全な成長が可能にみえる一方で、みずほのアナリスト、マービン・ロー氏によると、微博と競合するテンセントのメッセージングアプリ「微信」(ウェイシン)が内輪の性格が強いことを背景に絶大な人気を得ており、検閲をめぐる論争の宣伝効果は微博にとってマイナスの作用をもたらす可能性があるという。
微博は海外では「ウィーチャット」で知られ、バークレイズの推計によると現在のユーザー数は約4億人で、ことしの売上高はほぼ5億ドルに達したとみられる。
インターネット関連統計をまとめている政府機関の中国インターネット情報センター(CINIC)は1月に公表した年次報告の中で、ミニブログ微博などのソーシャルメディアの利用は減少していると指摘。2013年に微博の利用は9%減少したが、モバイルメッセージングサービスの利用は爆発的に伸び、ウィーチャットは7800万人以上の新規ユーザーを獲得したとしている。
微博は依然として純損失の赤字が続いているものの、2013年の売上高は前年の6590万ドルからほぼ3倍の1億8830万ドルに増え、純損失も前年の1億0250万ドルから3810万ドルに縮小している。
公共プラットフォーム
アナリストたちは依然として微博は競争力を維持できると主張する。公共性の高い情報発信プラットフォームは、ウィーチャットのようなメッセージングツールとは異なるというのがその理由だ。米国市場では、フェイスブック
17日のロイターのテレビインタビューで、新浪のチャールズ・チャオ会長は微博と微信が両社ともに発展することは可能だとの考えを強調。「両社のアプリを詳しく見ると、大きく異なることが分かる。微博は公共性が高く、メディア重視だ。一方ウィーチャットは私的ネットワークにより近く、コミュニケーションを重視する。多くの中国人は両方を利用しており、お互いに補完性が非常に高い」と述べた。
一方、現地の報道によると、中国当局は過去数カ月間の間に多くの微信のアカウントを閉鎖しており、閉ざされたメッセージングプラットフォーム上で共有されるコンテンツであっても、当局の監視の目を逃れることができないことが示された。
委縮効果
冒頭のシュー氏は買春の罪を認めており、中国政府は深刻な病状を理由に今週シュー氏を釈放したとしている。ただ、彼が一般向けにメッセージを投稿している間に釈放は行われなかった。
微博におけるフォロワーが1200万人に上るシュー氏は昨年9月時点、手錠につながれた囚人服姿で国営テレビのインタビューに出演し、「無責任な投稿」について謝罪するとともに「表現の自由が法に優先されるべきではない」と述べた。
国営新華社通信によると、これとは別に中国の裁判所は17日、微博に異なる12のアカウントを持つマイクロブロガーのQin Zhihui氏に対し、初めてネット上のデマを規制する新法に基づき懲役3年の判決を言い渡した。Zhihui氏は、列車事故で死亡した外国人の乗客に対して政府が補償金を支払っているとの虚偽の話を広めたとされる。
ノースカロライナ大のJiang教授は、マレーシア航空機の消息不明事故などホットな話題に関して今後も微博は公共のプラットフォームとして存続し続けるだろうが、やり取りの大部分が他のプラットフォームに広がると、ユーザーの関心は薄れていく可能性があるとみている。
その上でJiang教授は「正直言って微博は昨年から一昨年に上場していたら、もっと良い結果になっていただろう。当時の方が人気は高かった。現在は微信が競争の上で深刻な脅威となっている」と指摘した。
(Gerry Shih and Yimou Lee記者)
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