安倍首相、「3年ぶり実力者会合」に飛び交う臆測 浮上する秋口解散説、「ポスト安倍」も活発に

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そうした中、19日の4者会談と前後して、政界では秋口解散説が飛び交っている。安倍首相は18日の会見で「選挙については頭の片隅にもない」とお定まりのセリフで否定する一方、「国民に信を問う時が来れば、躊躇なく断行する」と任期内の解散断行への意欲もにじませた。

9月の党役員任期切れに合わせての党・内閣人事については、「人事はまだ先の話」とかわした。ポスト安倍については具体名を避けつつ、「後継者は育てるものではなく、育ってくるものだ。私も誰かを育てるより、活用させてもらう」などと述べた。これは、任期中の最後の人事になるとみられる次期内閣改造・党役員人事で多数のポスト安倍候補を起用する意向をにじませたとも受け止められている。

甘利氏もこれと並行するように、18日のメディアのインタビューの中で、「秋にやったほうがいいという人もいる。秋以降、経済対策と合わせて(解散)する可能性はゼロではない」と解散風をあおるような発言をしている。

党内で活発化する「ポスト安倍」の動き

ここにきて自民党内では、ポスト安倍をめぐる動きが活発化している。世論調査で一番人気の石破茂元幹事長は、これまで同様に政権運営への批判を繰り返す。安倍首相が後継者に望んでいるとされる岸田文雄政調会長は、ポストコロナでの基本政策づくりに意欲を見せて存在のアピールに躍起だ。

河野太郎防衛相による陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージスアショア」配備計画の停止表明も、「総裁選出馬への環境整備」(閣僚経験者)との見方が広がる。19日の4者会談ではこうした党内状況についても「突っ込んで話し合った」(周辺)との見方が相次ぐ。

安倍首相は日曜日の22日。終日私邸で過ごし、来客もなかった。安倍首相の休日は1月25日の土曜日以来、約5カ月ぶり。厳しい国会対応からもほぼ解放されることもあり、側近も「政治休戦が首相の政局運営への意欲と自信の回復につながる」と期待を隠さない。

ただ、今後の政局運営の組み立ては、「すべてコロナ次第」(自民長老)との状況は変わらない。大規模な感染第2波が襲来すれば、「解散どころではなく、コロナ対策の責任も問われる」(同)のは避けられない。安倍首相は「大好きなゴルフの再開も待ち望んでいる」(周辺)とされるが、「1強復活への道はまったく見えない」(首相経験者)のが実情だ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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