他人の投稿「リツイート」法的責任は問われるか 過去には投稿主の発言と同じ扱いとの見解も
また、平成27年11月25日の東京地裁判決は、リツイートについて「既存の文章を引用形式により発信する主体的な表現行為としての性質を有するといえる」としたうえで、「本件ツイート等の名誉毀損性の有無を判断するに際しては、リツイートに係る部分をも判断対象に含めるのが相当」と示しました。
「賛同する意思を示して行う表現行為」
令和元年9月12日の大阪地裁判決は、ジャーナリストの岩上安身さんが、大阪府知事時代の橋下徹さんについて書かれた「20歳以上年上の大阪府の幹部たちに随分と生意気な口をきき、自殺にまで追い込んだことを忘れたのか! 恥を知れ!」といった他人の投稿をリツイートしたことが、名誉毀損に当たるかどうかが争点となりました。
なお、岩上さんは、橋下さんの提訴時までにリツイートを取り消しています。
原告の橋下さん側は、「リツイートであっても、そのまま自身のアカウントで投稿する時点で自身の発言と同様に扱われ、当然に被告の発言行為とみなされるというべき」と指摘。
「一般の閲読者は、被告が、相応の取材をしたうえで、元ツイートを原文ママの状態で閲読してもらいたいと考えて投稿をしたと受け取るものと考えられる」として、今回のリツイートは岩上さん自身の発言として扱われるべきと主張しました。
一方、被告の岩上さんは、リツイートは自分の意見を発信する以外に、第三者の投稿内容を紹介して拡散することも含まれると指摘。
拡散の目的には「元ツイートの内容に賛同する意思表示の場合もあれば、内容に批判的であるからこそ紹介する場合、リツイートをした者の単なる備忘録的な目的の場合など、さまざまな場合がある」とし、「情報提供の趣旨でリツイートしたにすぎないから投稿の行為主体とみることはできない」と反論しました。
裁判所は、元ツイートを批判したり議論を喚起する目的でリツイートする場合、「何もコメントをつけないで元ツイートをそのまま引用することは考えがたく、投稿者の立場が元ツイートの投稿者とは異なることなどを明らかにするべく、当該元ツイートに対する批判的ないし中立的なコメントを付(ふ)すことが通常である」と指摘しました。
そのうえで、コメントをつけずに引用するリツイートは、一般の閲読者の読み方を基準とすれば、前後のツイート内容からリツイートの意図が読み取れる場合などをのぞいて、「リツイートの投稿者が、自身のフォロワーに対し、当該元ツイートの内容に賛同する意思を示して行う表現行為と解するのが相当」と示しました。