公立校とインター校「ネット教育格差」の背景 「教える」に対する取り組みがまず違った

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このようにインターナショナルスクールは、「教える」スタイルがまったく違う学校なので、PDFのテキストをメールで送って「自習」してください、だけだとまったく何も教育できていない、ということになります。そもそもインターネットでなんでも情報が手に入る時代、学校とは対話的に生徒同士、あるいは先生と話す場所という意識が強いので、オンラインはなにがなんでもやらなければならないものだったのだと思います。

一方、日本の文科省は5月12日に行ったYouTube配信で、新型コロナ休校でオンライン授業が進まない現状に対し、各自治体に向けたメッセージとして「既存のルールにとらわれず、臨機応変に。ルールを守ることが目的ではない」や「現場の教職員の取り組みをつぶさない」という危機感を露わにしたメッセージを発信しました。こういってはなんですがお役所の方の発言とは思えない柔軟なトーンです。オンライン授業推進のメッセージの先には、新しい学校の形への意欲があると期待したいです。

授業のオンライン化どう生かす?

「ポストコロナ時代のニューノーマル」。最近よく耳にする言葉ですが、コロナ以前から日本においても、丸暗記のような学習スタイルを見直す動きは活発になっているので、せっかく動き始めた新しい学び方、新しい教え方は継続して議論すべきと思います。

授業のオンライン化をどう生かすのか。例えば生徒はいつでもパソコンという「計算機」を手にしているわけで、おそらくこの先も計算機(電卓)機能を持ったデバイスを普通に使っていくことになるでしょう。

そうなると、暗算は1つの特技にはなると思いますが、難しい方程式の解き方を知っているのに単純な計算ミスで点数が取れない、面白い定理に興味があるのに計算練習がイヤで数学を嫌いになる――こんな子どもたちを減らすことができるかもしれません。

英語についても、単語は今や右クリック1つで訳がでてきます。スペルチェッカーがあればつづりの単純ミスも補正してくれます(もともとの正しいスペルは知っておく必要がありますが)。

そして負担が減った分だけ自分で考える、興味のあるものを掘り下げてみることができるようになると思います。

偶然にも、今年はGIGAスクール構想といって生徒1人が教室でPCを1台使う環境の整備に入った最初の年でもあります。コロナパンデミックによってテクノロジーが教育に与えるポジティブなインパクトがあらためて証明された今、特に私のいるIT業界の果たすべき責任は大きいと考えています。

デビット・ベネット テンストレント最高顧客責任者

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David Bennett

1979年にジャマイカで生まれ、カナダ国籍を持つ。カナダトロント大学大学院卒。早稲田大学にて日本語を習得、学習院女子大学大学院にて日本古典文学を学ぶ。東京でコンサルタントとして社会人キャリアをスタート。AMD社コーポレートバイスプレジデント、および同社のレノボアカウントチームのゼネラルマネージャーを務め、コンシューマー、コマーシャル、グラフィックス、エンタープライズプラットフォームなど広範な事業を手掛ける。2018年5月レノボ・ジャパン社長に就任、2022年6月から現職。古典文学が好き。

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