米財務省報告、人民元は「著しく過小評価」 「為替操作国」の表現は見送り

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4月15日、米財務省は半期に一度の為替報告書で、中国人民元はなお「著しく過小評価」されているとし、今後の相場動向を注視する姿勢を示した。写真は2010年8月、安徽省で撮影(2014年 ロイター)

[ワシントン 15日 ロイター] - 米財務省は15日、半期に一度の主要貿易相手国の為替政策に関する報告書(為替政策報告書)を公表した。今回も中国を為替操作国と認定することは見送ったが、人民元はなお「著しく過小評価」されているとし、今後の相場動向を注視する姿勢を示した。また、新興国を中心に為替介入が活発しており、世界経済の不均衡是正が阻害されていると指摘した。

今年の人民元下落「幅、ペースとも異例」

報告書は、中国が今年3月に人民元の許容変動幅を拡大したことを「人民元の相場形成に市場が果たす役割が一段と増す機会をもたらした」と評価する一方で、人民元はなお過小評価されていると指摘した。特に今年に入ってから人民元下落は急速で、中国政府の人民元改革に向けた姿勢を疑問視している。

人民元相場の動きについて報告書は、昨年は上昇したが速度は遅く「各要因は、人民元相場が依然、著しく過小評価されていることを示唆する」と指摘。今年に入り人民元が下落していることを挙げ「中国は、3兆8000億ドルもの外貨準備を有するにもかかわらず、今年第1・四半期に大規模な外貨購入を続けた」とし「これは市場が(人民元相場を)決定するのを妨げる(当局の)動きが続いたことを示す」と述べた。 過去にも元の下落局面はあったが「最近の下落のペース、幅は過去に例がない」とし、最近の動きは「中国が、元の上昇に再び抵抗、あるいは介入の度合いを弱め市場主導の相場形成を目指すとした中国政府の方針の後退を示唆している場合は、深刻な懸念となる」と指摘した。

世界的な介入活発化 不均衡是正を阻む

米政府は、中国などの新興国が輸出促進を狙い自国通貨の価値を低く抑えていることが世界経済の不均衡是正を妨げていると考えている。

これに対し、新興国側は、米国が超緩和的な金融政策をとった結果、大量のマネーが流入し、自国通貨の安定を維持するため市場に介入する必要に迫られ、ドル準備を膨らませざるを得なくなったと主張している。

報告書は、2013年後半に、為替介入とドル準備蓄積の動きが世界的に活発化したと指摘。中国が人民元変動幅拡大を発表する前の数カ月間に「中国当局の人民元相場を低く抑えるための大規模な介入」を行ったとする報告があったとしている。

「引き続き世界需要の不均衡是正の動きは不十分で、むしろ状況は悪化した可能性がある」と指摘した。

ドイツ批判弱める

今回の報告書も、ユーロ圏の経済回復に向け、ドイツなど域内で経済が良好な国に内需拡大への取り組みを強化するよう求めた。 ただし、ドイツへの批判は弱め、同国の経済政策がデフレ圧力になっているとの文言を削除した。

 

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