コロナで露呈「年功序列な会社」が時代遅れな訳 「社員の頑張り」評価する時代はもう終わりだ

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人種や性別、年齢は評価に影響せず、仕事に必要な能力を備えているのが基準となる。いわゆるグローバル企業は典型的なゲゼルシャフトだが、上司も全人格的なものではなく、あくまで機能として上司の役割を果たしているにすぎない。

企業とは利益を上げることを目的につくられた合理的組織であり、本来は完璧なゲゼルシャフトであることが望ましい。だが、安価な製品を大量生産する昭和の時代までは、ゲマインシャフト的な社風が業績拡大に寄与したことから、日本企業はなかなかゲゼルシャフトに移行できなかった。

ゲマインシャフト組織の限界

欧米とほぼ同一の労働法制が存在し、労働者が自ら権利行使できる環境が整っているのに、ブラック企業による奴隷労働がなくならない現実は、こうした社会学的な要因がなければ説明がつかない。

だが全世界的にビジネスのIT化が進み、消費者の価値観が多様化している現代社会では、ゲマインシャフト的な組織は機能不全を起こしつつある。こうしたなかで発生したのがコロナショックである。

社員の感染防止のためテレワークに移行する企業が増えたが、遠隔でも業務をスムーズに進めるには、情緒に依存したゲマインシャフト的なマネジメントから、ルールと文書を基本としたゲゼルシャフト的なマネジメントに移行せざるをえない。仕事をしている様子が見えない状況では「頑張り」を評価基準にしたところで限界は見えている。

近年、日本の企業組織が時代に合わなくなり、これが労働生産性を著しく引き下げているとの指摘が相次いだが、日本企業はなかなか変われなかった。だがコロナショックの影響は大きく、かたくなだった日本人の行動様式にも変化の兆しが見え始めた。逆に言えば、今回の危機をきっかけにゲゼルシャフト的な組織への転換が実現できなかった場合、二度とチャンスはやってこないかもしれない。

<本誌2020年6月2日号掲載>

加谷珪一(かや けいいち)/経済評論家
東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村証券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。http://k-kaya.com/
「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

世界のニュースを独自の切り口で伝える週刊誌『ニューズウィーク日本版』は毎週火曜日発売、そのオフィシャルサイトである「ニューズウィーク日本版サイト」は毎日、国際ニュースとビジネス・カルチャー情報を発信している。CCCメディアハウスが運営。

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