「伊勢丹」になりきれない地方百貨店の苦悩

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「伊勢丹」になりきれない地方百貨店の苦悩

全国の百貨店に先駆け、伊勢丹の商品情報システムを導入した井筒屋。今なお成果が出ず、イラ立ちは募るばかり。一方、導入から1年で着実に実を結びつつある岩田屋。両社の巧拙を分けた違いは何か。 「百貨店にとって、システムをいかに使いこなせるかが、重要な課題になってきた」。伊勢丹の武藤信一社長はそう断言する。

百貨店の勝ち組、伊勢丹。その好調を陰で支えているのが、独自の情報システムである。商品の販売状況や在庫を管理するPOS連動の商品情報システムと、自社のハウスカードを通じた顧客管理システムを組み合わせたもので、いつ誰が、どこで何を買ったかがすべて記録される。

こうしたシステムがほかの百貨店にないわけではない。ただし、商品について、多くの百貨店が管理しているのが、せいぜいブランド、アイテム、カテゴリーまでであるのに対し、伊勢丹の場合、すべての商品の色、サイズにわたるまで、詳細に管理している点が他社とは大きく異なる。いわば「単品管理」である。
 来年4月に伊勢丹との経営統合を控える三越。石塚邦雄社長も、「単品管理に代表される伊勢丹の情報システムと、MD力(商品企画・販売力)を取り入れて、収益力の強化を図りたい」と、システム導入に再浮上への大きな期待を寄せる。

だが、このシステム、導入さえすれば成果が約束される、というシロモノでは必ずしもないようだ。その内実は、先に導入を完了した百貨店2社の例が物語っている。

膨大な作業、少ない人手 リスク嫌う納入メーカー

「伊勢丹さんは使い方もすべて教えてくれましたよ、包み隠さず。でも、できないんです」。北九州を地盤とする百貨店、井筒屋の担当者は渋い表情でそう話す。

井筒屋が、それまで使っていた独自のシステムに代わって、伊勢丹のシステムを取り入れたのは2004年9月。「市場は縮小の一途。今後、地方百貨店として生き残る道は、メーカー任せの場所貸し業となることか、あるいは自主的に売り場を編集する伊勢丹のような店になることか--。断然、後者だと考えた」(井筒屋社長室)。

システム導入が決まると、2人の伊勢丹社員が派遣され、井筒屋社員も伊勢丹側が主催する研修に参加した。そしてもちろん、社員の多くは、システムを導入したからといって、すぐに成果が出るものではないことも承知していたという。目に見える成果が出るまでには、少なくとも2~3年はかかるだろう、と。

丸3年が経過した今、それでもなお成果は見えてこない。社内でもいらだちの声が聞かれるようになった。「仕入れ先との関係が特に変わったわけでもない。伊勢丹のような大型店ならまだしも、こうした地方百貨店には必ずしも適していないのではないか」と、ある社員は漏らす。

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