「ヤリスクロス」、C-HRやライズと異なる強み 激戦区のSUV市場でどこをアピールするのか

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欧州市場の同ジャンルの中で、ハイブリッドを持つのはヤリスクロスだけだ。来年から、欧州ではCO2排出量規制が一段強化される。1km走行する際に排出できるCO2の量が、95g以下とされるのだ。

これは1台ごとの規制ではなく、自動車メーカーが販売する新車の企業平均値として規制されるので、車種ごとの燃費が問われるわけではない。だが、大幅に燃費を向上してその数値をクリアできなければ、自動車メーカーが反則金を支払わなくてはならない厳しい規制である。

これまで、欧州ではディーゼルエンジンによってCO2排出量規制を何とか達成できないか模索してきた。ところが、2015年のフォルクスワーゲンによる米国での排出ガス偽装問題を機に、ディーゼル車の機運がさめる傾向にある。

あわせて、95g/km規制に企業平均値として対応するため、欧州の自動車メーカーはより大柄で燃費の悪い車種から電動化を進め、コンパクトカーまで手が回っていない。一方の消費者は、古いディーゼル車に乗り続けたまま、市街地への乗り入れが禁止されるなどして日々の生活にも困っている。

そこに、人気のコンパクトSUVで、かつハイブリッドによって燃費に優れるヤリスクロスは、手頃な価格のディーゼル代替車を探している消費者の目に留まるのではないか。まだヤリスクロスの燃費値は公開されていないが、ヤリスを参考にすれば、ハイブリッド車はガソリンエンジン車の1.5倍以上の燃費性能を備える。

ヤリスが生んだ好感度を生かせるか

CO2排出量規制という公の規制とは別に、ディーゼル車を愛好してきた消費者の燃料代の面でも、HVの利点は大きいだろう。ただし、ディーゼル車をマニュアルシフト(MT)で運転し慣れてきた欧州の消費者には、ハイブリッド車で燃費を出す運転のコツを同時に啓蒙する必要があるのではないか。

「ヤリス」はWRC(世界ラリー選手権)で活躍している(写真:トヨタ自動車)

トヨタのハイブリッドシステムは一種独特な面があり、加速の後半でいったんアクセルを緩め、モーター駆動をより積極的に活用するアクセル操作をしなければ、思ったほどに燃費が好転しない場合があるからだ。

これまで欧州ではハイブリッド車ヘの注目が限定的だったが、ディーゼルが選択肢から消えつつある今、販売が伸びる傾向にある。また、ヤリスがTNGAの採用によって走行性能の高さを示していること、世界ラリー選手権(WRC)で活躍していることも、消費者のトヨタ車への好感度を高めている。ヤリスクロスの欧州での販売は2021年半ばを予定するが、その動向は要注意だ。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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