米医療保険改革法案が上院をかろうじて通過、下院案との一本化調整に焦点が移る

米医療保険改革法案は与党民主党内部の対立が表面化し、その成立が危ぶまれていたが、24日、上院(定数100人)で可決した。この法案はオバマ政権の内政の目玉であり、その挫折は同政権の命取りになりかねないが、ハードルを一つ突破した。すでに下院法案は議会を通過していたが、今後は下院法案との調整、一本化を進めなければならない。

民主党リベラル派がオバマ政権を公然と批判し始めたのは、法案が保守派に妥協して、もともと盛り込まれていた改革提案がほとんど削除され、2009年8月に議会を通過させようとした当初案とはほど遠いものになったからだ。

上院で法案を通すには100議席中、議事妨害阻止に必要な60議席を確保しなければならなかったが、結果は賛成60,反対39。民主党および同党系の無所属議員2人が賛成に回り、共和党議員の反対をぎりぎりでかわした。オバマ大統領はすべての国民にとって、ほどほどの負担で医療保険改革を実現させるようにすると公約している。しかし、共和党からは負担が大きすぎると攻撃されていた。公的保険の創設は見送り、連邦政府と提携した民間の保険会社が保険を提供するという内容で、10年間で8710億ドルの支出を予定している。

09年11月に下院を通過した法案は支出額も1兆ドルを越え、公的保険を創設するという考え方でリベラル派に寄った内容だ。上院案はより中道寄りだが、両院協議会で一本化させるためにはさらに中道寄りにする必要があるだろう。

下院議員は新年になると選挙準備を始めなければならない。民主党は435議席中258議席を擁し過半数を制しているが、中間選挙でかなりの議席が失われるのではないかといわれている。早期の医療改革法案一本化がうまくいかないと、中間選挙後、多数派を確保したとしても、その差が少なければその成立は難しくなる。さらに次の選挙で、民主党系の上院議席は60議席を割る可能性もあるといわれている。ホワイトハウスは、法案をいま成立させるか、何年か先に延ばすか、議会を舞台に瀬戸際の攻防が続く。

最近のウォールストリート・ジャーナル紙とNBCニュースとの共同世論調査によると、オバマ政権の業績についての支持率は47%と初めて50%を割り込んだ。また、国が正しい方向に向かっていると答えた人はわずか33%にとどまった。その調査に関係したピーター・ハート氏は「政治状況は劇的に変わっている」という。オバマ大統領の個人的人気は依然として高いが、その政策実現能力が信頼されるか、医療改革法案の帰趨次第である。
(ピーター・エニス =東洋経済オンライン)

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