周回路のカーブを終え直線路に戻ると、今度は進路上に速度の遅い複数の前走車を捉えた。ここでは自車から約150m先に前走車を認識した時点で緩やかに減速状態へと移行。26秒ほどかけて77km/h分の減速操作(熟練ドライバーが行う丁寧なブレーキ操作)が行われ、最終的に前走車との車間時間を約6秒(車速は23km/h)に保ったままの追従走行が続く。車間時間とは、前走車が通過したある地点に、後続の自車が到達するまでの時間だ。
この状況は、高速道路上で渋滞に遭遇するといった日常的なシーンの再現だが、自車速度が低いことから(今回は23㎞/h)、試乗時にはナビゲーション画面を通じた「Skype」による映像通話が楽しめる環境が提供された。前述のアイズオフを容認する自動化レベル3の利点をわかりすくドライバーに体感させるには好都合な演出だ。
こうした車内エンターテインメントの拡充に対し、筆者は将来性に期待を寄せる一方で、ナビゲーション画面の注視(1秒以上見続けること)やそもそも意識が運転操作から遠のくことから、ある種の危うさを実感。これはアイズオフでもっとも留意すべき部分だ。
カギを握る「社会受容性の形成」
走行中の安全はどうか? 「約6秒の車間時間」はしっかりと車間距離がとられた状態だが、この時点で急な割り込みや突発的な事象、例えば前走車の追突事故や自車の横方向を走る車両との接触事故が発生した場合はどうなるのか?
同乗していただいたホンダの開発者に伺ったところ、「衝突被害軽減ブレーキで対応するが、複合かつ突発的な状況には対応しきれない可能性もある」という。
筆者は交通事故に対する警戒心が人一倍強く、予測運転ができなくなるため運転中のよそ見を徹底的に嫌っているからかもしれないが、例えば試乗時の映像通話では通信速度や処理能力に起因するのか、ナビゲーション画面を通じたSkypeの映像通話には約2秒にわたるタイムラグが発生していた。そのため、「もしもし……」、「……もしもし」といったムダな待ち時間がうまれ、その都度、相手の顔を表示するナビゲーション画面に意識が吸い寄せられた。
2018年に日本で生産された乗用車において約74%の普及率を誇る衝突被害軽減ブレーキや、同55%近い普及率を誇るACCは、ともに自動化1レベルの運転支援技術として実装されている。レベル2の要素技術である車線中央維持機能は約30%だ。
今回の法改正で容認された自動化レベル3は、レベル1とレベル2の要素技術の上に成り立っている。ここがファーストステップ。そこにドライバーへ運転操作の権限が戻されるシーンが想定され、ドライバーはそれに応える義務が生じる。これがセカンドステップ。そして、サードステップとして、国土交通省から指針が示されているように自動車メーカーや販売店では、自動化システムの「できること/できないこと」を明確にユーザーへ伝える義務が発生する。これこそ社会受容性の形成だ。
冒頭、ホンダの八郷社長が、「お客様に正しく使っていただくためになにをお伝えすべきか検討中」とした真意はここにある。いずれにしろ、2020年にはホンダからレベル3を搭載した車両が販売されることが公になった。次回はぜひ公道で、その実力を確認してみたい。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら