「コリーニ事件」が突いたドイツ司法の問題点 政治をも動かしたドイツの法廷小説が映画化
1960年代末、ドイツの連邦議会は議論もなく満場一致である法律を採択した。だが一見、無害そうに見えたその法案には実は「致命的な一文」が差し込まれていた。そんな戦後ドイツの不都合な真実ともいうべき法律の落とし穴は、後の世に悲劇をもたらした――。
”現実の政治を動かした”小説を映画化
ドイツで屈指の刑事事件弁護士として活躍し、自身で取り扱った事件をベースとした社会派ミステリー小説を数多く発表してきたフェルディナント・フォン・シーラッハ。彼が2011年に刊行した初の長編小説『コリーニ事件』は、抑制のきいた簡潔な筆致で驚愕の事実を暴き出し、ドイツ国内だけでも50万部以上、さらに日本を含む世界でも話題を集めたベストセラー小説となった。
物語の根幹に関わるため、物語の鍵となる法案について詳細に触れることはできないが、この法律の落とし穴はドイツ国家を揺るがし、2012年1月には、ドイツ連邦法務省が「過去再検討委員会」を設置することを決定した。まさにフィクションが現実の政治を動かした事例だ。そんな話題の小説を映画化した『コリーニ事件』が6月12日に全国公開される予定となっている。
本作の物語の舞台は2001年。3カ月前に事務所を開いたばかりの新人弁護士カスパー・ライネン(エリアス・ムバレク)のもとに、殺人犯の国選弁護人の仕事が舞い込んでくる。弁護することになった被疑者は、30年以上にわたり、ドイツで模範市民として暮らしてきたイタリア人ファブリッツォ・コリーニ(フランコ・ネロ)。彼はベルリンのホテルのスイートルームで、経済界の大物実業家ハンス・マイヤーを殺害した罪で起訴されていた。
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