ゼロにリセットできた これからがスタート
大手商社や金融機関を引受先に1535億円の優先株による増資を3月17日に実施します。増資が必要な理由は。
自己資本比率で20%をクリアしたいという思いがあった。今回の増資で(16%から)22%になる。中期経営計画を確実に進めていけば、2010年度には全日本空輸と同水準の30%もクリアできる。新しい航空機を買うための資金調達が円滑にできるようになる規模だ。新旧航空機で燃費効率には相当な差があり、これだけ燃油高になると、新しい航空機に替えるスピードで勝ち負けが決まる。
銀行から、大型増資に関する相当なプレッシャーがあったのですか。
まったくない。主力取引行には600億円引き受けてもらい、半分以上は事業会社にお願いしているのだから、そういった意味では銀行の意向は相当薄い。
われわれが考え、主体的に動いた。一方で出資してくれた商社などのビジネスともまったく切り離して考えたい。ただ、総額は変わらないが、あと数社が引受先に追加される可能性も残っており、最終形ではない。
年100億円の追加的な人件費削減も表明されました。社員の疲弊度も高まっているようですが、再建の手応えは。
これからがスタート。ゼロにリセットできた。個人的には今まではマイナスを埋めてきたという意識が強い。これからいろいろな意味で種々の対策が打ち出しやすくなる。これからが大事だ。中計を達成することが会社の存続につながり、会社の存続が社員の福利厚生にもつながる。(JALが経営危機にあった)昔は危機意識がなかったが、最近は危機意識が一人ひとりに浸透してきた。成果が出れば社員にも還元していくことで、疲弊感を払拭したい。
今回、大型増資を中計に盛り込むことができましたが、次の一手は考えていますか。
地方路線も含めて路線をしっかり維持する。燃油高で大変だが、ネットワークを張り続けることがいちばんのサービスにつながる。海外で活躍している燃費効率の高い小型飛行機は、日本の空ではまだ活躍していない。採算が悪い路線も小型機なら生き返る。やれなかった路線をやることが一つの工夫であり、これが同業他社とは違うところだ。
中計では、赤字の貨物部門再編とJALカード売却に触れていません。
まだ何も決まっていない。 貨物は自社運営という現状維持では今後難しいという問題意識はある。その点でいろいろな手法を検討している。一方、JALカードもただ売ればいいというものではない。そこから先に提携先とどう価値を上げていくかが重要であり、時間がかかっている。
(冨岡耕記者 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済3月15日号)
にしまつ・はるか
1948年生まれ。72年東京大学経済学部卒、日本航空入社。フランクフルト支店を経て、その後は一貫して財務畑を歩んだ。日航社長としては異例の経歴。
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