銀行はこの商品の仕組みを通じて、個人投資家が原油を売買するためのチャンネルを担っているようにも見えるが、実際の運用においては投資家の売り気配と買い気配を計算した後に、場外で売買を成立させる。
銀行の役割はマーケットメイカーに類似しており、個人投資家は原油先物市場には直接的には参加していない。銀行は日々、リスクポジションをヘッジして、値上がり益や為替スプレッド、余剰の保証金、および利息などを獲得している。
2013年、中国工商銀行はいち早く個人投資家向けに“紙原油”の商品を売り出し始めた。2015年には中国建設銀行と中国交通銀行も類似の商品を販売し始めた。2017年からは中国銀行、民生銀行、浦東発展銀行などの多くの大中型銀行も“紙原油”商品を販売しているが、商品の仕様はほとんど同じだ。
また、多くの銀行関係者がこの種の商品はすでに中国銀行保険監督管理委員会に登録されていると話す。複数の銀行の商品カタログによると、この種の商品は銀行理財類中の”R3級”のバランス型に属しており、理財商品の5段階リスク分類中の中間に位置する。
10万人の投資家の資金が原油先物に流入
「バランス型なのに、なぜ投資家が元金をすべて失うリスクを負わなければならないのか。なぜ銀行に巨額の保証金を支払わなければならない状況になるのか?リスクマネジメントの概念とまったく矛盾している!」――多くの投資家や弁護士は、商業銀行が適合性の原則(訳注:投資家を保護するための販売・勧誘の自主規制ルール)を満たしていなかったのではないかと疑問視している。
2020年3月以来、“紙原油”は高い評価を得てきた。ある大手銀行のトレーダーは、原油価格が1バレル=20ドルまで下落した際に多くの個人投資家が市場に駆け込み、「原油を底値で買いたい」という声が絶えなかったと話す。3月13日、ある投資家は、工商銀行が人民元決済口座での北米原油または国際原油に連動する2つの投資商品の取り扱いを一時的に停止しているのを発見した。
工商銀行の関係者は「人民元ベースの原油商品を購入するには、人民元をドルに換える必要がある。当時は底値を狙って購入しようとする人があまりに多く、外貨管理局が当該商品に対して外為購入制限を設定するほどになった。しかし同時期に、中国銀行の大型支店では“原油宝”のプロモーションに力を入れ始めた」と話す。
無知の者は恐れをも知らない。“紙原油”に飛びついた約10万人の投資家たちが投入した大量の資金は、短期間で国際的な原油先物価格を盛り上げる主要な資金源となり、それはすぐに人々に知られることとなった。
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