旅客機内の「3密」対策で「格安運賃」が消える? 感染防止の「新型シート」を開発する企業も
乗客同士の距離を確保することが難しかったとしても、航空会社としては、飛行中に乗客の間で感染が広がるような事態は何としても避けたい。そうした中、個々の座席をプラスチックの衝立で囲み、いわゆる「エアロゾル感染」の可能性を減らそうとする試みを打ち出した座席メーカーがある。
イタリア南部ナポリに拠点を持つアビオインテリアズ(Aviointeriors)は、感染対策を施したエコノミークラス用座席を開発中と発表した。
2タイプの開発を進めているとしており、1つは現状の座席の頭部に囲いを取り付ける「グラスセーフ」という製品。もう1つは3列席の中央座席を後ろ向きにして、隣客との間をプラスチックの壁で完全に仕切ってしまう「ヤヌス(JANUS)シート」だ。
同社がこれを自社ウェブサイト上で発表したのは4月20日。航空ジャーナリストの北島幸司氏は「アビオインテリアズ製シートは日本の航空会社への導入実績こそないが、世界の50社以上に納入している実績のある会社」としたうえで、「このタイミングでの新型シートの発表はタイムリー」と評価している。
JALも「ミドル席」不使用へ
ほかの乗客と距離を空けたいと望む利用客が多い中、航空各社は「みんなが嫌うミドル(真ん中)シート」を空ける方向へと向かっている。
すでにデルタ航空やアラスカ航空はミドルシートの販売を取りやめており、日本航空、スカイマークも座席指定の対象外とすることを発表した。欧州でもLCCのイージージェット(イギリス)、ウィズエアー(ハンガリー)がそれぞれ、こうしたプランが現実的かどうか熟慮中と伝えられている。
エミレーツ航空は、それぞれの旅客グループが直接隣同士にならないように座席配分を行っているという。家族は並んで座れるが、1人で乗る個人客は両側に空席を設けるといった形だ。
また、追加料金をもらうことで空席を設ける方策を打ち出した航空会社も出現している。中国の海南航空傘下の長安航空は「額外占座」という商品名で、1席当たり200元(約3000円)で空席の利用権を売り出している。1人当たり最大8席まで買えるとしており、「1人当たり9席必要」というソーシャルディスタンスの考え方とも合致する。なお、同社によると、空席を買い取っても「マイレージポイントの追加加算はしない」という。
LCCは長年をかけて世界各国で市民権を得てきた。近年はレジャー層だけでなくビジネス客にも食い込んでいるが、コロナ禍は、そんな努力の蓄積を吹き飛ばす恐れがある。目に見えないウイルスで将来の見通しが読めない中、航空業界はどのような形で「巡航高度」へと戻れるのだろうか。
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