旅客機内の「3密」対策で「格安運賃」が消える? 感染防止の「新型シート」を開発する企業も

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イギリス公共放送BBCはジュニアック事務総長の発言を受け、「陸上で国民に課しているソーシャルディスタンス」、つまり2mの間隔を機内で取ったらどういうことが起きるか、と試算した。

例えばナローボディ機と呼ばれる単通路機材で、通路を挟んで3席×3席配置の場合、横方向は窓際にそれぞれ1人だけとし、さらに前後の2列を空けなければ2mの間隔が取れないという。

そうした想定で座席に乗客を配置していくと「3列(18席)ごとに2人」しか座ることができず、大まかに言って乗客1人に対し9席分を割り当てる必要がある。すると、単純計算で搭乗率13%程度の乗客を乗せただけで満席となってしまう。

面積比で見ると、エコノミークラスの10席弱はほぼファーストクラス1席分に当たる(9.6席分=エミレーツ航空の例。トラベルジャーナリスト・橋賀秀紀氏調べ)。機内でソーシャルディスタンスを確保しつつ採算性を維持するには、航空会社は乗客全員からファーストクラスに準じた運賃を取る必要が生じてしまう。

「格安の旅」消滅の危機

IATAが今年2月に発表した2019年通年の平均搭乗率は、世界全体では過去最高の82.6%。地域別では、アジア大洋州が81.9%、北米が84.9%、欧州が85.2%、アフリカは71.7%となっている。

LCCのビジネスモデルは、コンスタントに高い搭乗率を狙うものとなっており、例えば、欧州最大のLCCであるライアンエアーはコロナ禍の影響を受ける前の2020年1月には92%に達していた。同月は閑散期であり、同社は諸費用込みでなんと片道9.99ポンド(約1330円)のバーゲン運賃を打ち出していた。LCCはこのように、つねに激しい価格競争を繰り広げている。

欧州のLCC大手、ライアンエアの旅客機(筆者撮影)

新型コロナの感染拡大が収束するまで、機内でソーシャルディスタンスを確保する規定を導入した場合、各社が従来の価格水準のままチケットを販売すれば赤字の垂れ流しとなってしまう。

会見でジュニアック事務総長は厳しい現状認識を次々と述べた。「こうした規定はすべての航空会社にとって『受け入れがたい状態』だと認識している。とくにLCCにとってはとても厳しい」「もし、航空業界にソーシャルディスタンス規定が実行されたら『格安な旅』は消滅する……」

一方で、乗客同士の間を空けたところで「各国政府が決める健康基準をクリアできるかどうかは疑問だ」(IATA首席エコノミストのブライアン・ピアース氏)と懐疑的な意見もある。

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