鉄道各社、コロナ禍で不安な「今後の業績動向」 過去にない影響の大きさ、どうカバーするか

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人件費はどうだろうか。営業費用に占める運転費、運輸費など運行にかかわる人件費の割合は、会社によってばらつきがあるが、おおむね2割程度だ。

人件費に手をつけるのは容易な判断ではないが、JR北海道は社員全体の2割程度にあたる約1450人を5〜7月に1人あたり月に数日程度、一時帰休させると発表した。対象となる社員は運転士、車掌、駅員、本社要員などだ。国の雇用調整助成金を活用し、賃金の減額は行わないという。なお、JR東海は、運休する臨時列車の乗務員は自宅待機させるとしており、運休が乗務員コストの削減につながるわけではない。

新型コロナウイルス感染症がいつ収束するかは予測できないが、4月の状況が夏まで続けば、秋以降に回復したとしても運輸収入の挽回は容易ではない。それを経費削減でどこまで補えるか。より踏み込んだ対策として、利用者の少ない赤字路線を抱える鉄道会社の中には、そうした路線の廃止を検討する動きが出てくるかもしれない。

資金繰りの心配も

屋台骨ともいえる本業の苦戦のみならず、鉄道各社が進めているホテル、流通などの非鉄道事業も外出自粛で大きく落ち込んでいるだけに、資金繰りも心配だ。

運賃収入という日銭が入る鉄道会社は、これまで手元資金を手厚く確保する必要がなかった。しかし、運賃収入が落ち込んだため、JR東日本は運輸収入の約1カ月分に当たる1500億円のコマーシャルペーパー(CP)を3月に発行。「通常なら800億円程度だが、状況をみて多めに調達した」(深澤祐二社長)。4月にも期間3〜50年の社債を総額1250億円発行して手元資金を確保した。これは支払い利息の増加につながる。

日本経済がその影響から完全に脱したとしても、鉄道業界の完全復活は難しいという声もある。「多くの人が在宅勤務をして、会社に行かなくても仕事ができるということになれば、鉄道利用者が減ってしまう」と、ある鉄道関係者が懸念する。

一方で、朝ラッシュ時の混雑率が減少すれば、利用者の通勤は快適になり、大手各社が混雑対策に頭を悩ませる必要もなくなり、その分の費用を削減できる。小池百合子東京都知事が目指す「満員電車ゼロ」が思わぬ形で実現するかもしれない。コロナ後の鉄道業界は、はたしてどのような方向に向かうのか。

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