コロナに翻弄、JR北海道「札沼線」突然の幕切れ 緊急事態宣言発令で4月17日に廃止を繰り上げ

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この頃は新十津川まで向かう列車が朝昼夕方の3往復だったが、2016年3月のダイヤ改正で朝の1往復に減便、札幌からお手軽に楽しめるローカル線から、乗り潰しの難易度が高い路線に変身してしまった。

北海道医療大学―新十津川間の廃止後は代替バスが設定されるが、途中の石狩月形・浦臼を境として路線は分断される。

北海道医療大学側では、1つ隣の石狩当別が市街地となる関係で石狩当別―石狩月形間の月形当別線が9往復、石狩月形―浦臼間の月形浦臼線が5往復設定され、浦臼―新十津川間は北海道中央バスの滝川浦臼線が平日5往復・土休日4往復運転されているため、これを代替バスとしている。ちなみに、札沼線は北海道医療大学―石狩月形間が下り8本、上り7本、石狩月形―浦臼間が6往復で、札沼線時代と本数に大差はなく、所要時間にも大きな違いはない。

また、北海道中央バスは通常の路線バスだが、月形当別線の「とべ~る号」は32人乗りの日野ポンチョというコミュニティバスなどで使用されるバスのほか、月形浦臼線の「かばと~る号」とともに13人乗りのトヨタ・ハイエースをベースとした車も使用される。なお、月形当別線は下段モータースが、月形浦臼線は美唄自動車学校が運行を担当している。

このほか、札沼線と函館本線を結ぶ既存のバス路線として、江別と石狩月形を結ぶニューしのつバスの路線が1往復半、岩見沢と石狩月形を結ぶ北海道中央バスの月形線が8往復半(土休日等は8往復)、奈井江と浦臼を結ぶ浦臼町営バスが5往復半運行されているが、ニューしのつバスと浦臼町営バスは平日のみの運行で、日常的に使えるのは月形線のみとなろう。筆者も十数年前に、月形線と浦臼町営バスには乗ったが、日中の便で、乗客は自分を含めて両手で数え切れる程度だったと記憶している。

感染症に翻弄された廃止日

通常、路線の廃止前には大勢のファンが詰めかける姿を目にするが、今回の札沼線の廃止は極めて特異なケースとなるだろう。

新十津川で折り返す札沼線の列車。札沼線専用のワンマン車両が使用された(2012年2月、筆者撮影)

もともと、浦臼―新十津川間が朝の1往復だけで、大勢のファンが押し寄せたらどうなるかと思ったが、2020年4月3日の発表では週末とゴールデンウィーク中の日中に1往復を臨時列車として増発、5月2〜6日は石狩当別―新十津川間を全列車指定席にして混雑を回避するはずだった。

廃止が2度繰り上がったが、代替バスが4月1日から走っていたことで地元利用者の移動の不都合は回避された。台風などの災害や戦乱によって、復旧せずに廃止された事例はあるが、感染症の拡大で廃止を繰り上げた事例は聞いたことがなく、残念な幕切れとなる。

柴田 東吾 鉄道趣味ライター

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しばた とうご / Tougo Shibata

1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR・私鉄路線は一通り踏破したが、2019年に沖縄モノレール「ゆいレール」が延伸して返上、現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。『Rail Magazine』(ネコ・パブリッシング)や『鉄道ジャーナル』など、寄稿多数。

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