「対岸の火事」ではないブロードリンク事件 企業が意識を改めなければ情報漏洩が起きる
4000個近い記憶媒体の盗難・転売が起きてしまったのは、一義的には、ブロードリンクの管理体制の問題がある。しかし、それだけでなく、背景には廃パソコンをめぐる構造問題も浮かび上がる。
民間企業や官公庁などから排出される使用済みパソコンやプリンターといった情報機器が向かう先は、廃棄ルートとリユース(再使用)ルートの2つに分かれる。機器を出す側(排出元)からすると、リユースのほうが好ましい。資源の有効利用という面もあるが、廃棄は処理費用がかかるからだ。
一方、リユースなら排出元はパソコンなどをリユース業者に売れる。併せてデータ消去などを委託する場合はリユース業者に処理費用を払う。通常、この処理費用よりも機器を売った金額のほうが大きい。機種や機器の状態で異なるが、リユース業者への売却は1台5000程度、対してデータ消去など処理費用は2000円から3000円で、排出元にはおカネが残る。機器を買い取ったリユース業者は中古機器として第三者に売却して利益を出すビジネスモデルだ。
ところが近年、このリユースのビジネスモデルが成り立たなくなっている。あるリユース業界の関係者は、「中古パソコンの価格下落が大きい。高い値段がつくものは年々少なくなっており、使用年数7年以上となるとビジネスとして利益が出る価格が付かない」と話す。
少し前まで、安値の情報機器は海外に輸出して一定程度の資金を回収することができた。中国や東南アジアなどを中心にリユースやパーツを含めたリサイクルの需要があったからだ。
規制強化で閉ざされた輸出ルート
しかし2015年、廃棄物の国境を越えた移動を管理する「
業界に逆風が吹きつける中、量の拡大に活路を見いだしたのがブロードリンクだった。リユース用に他社よりも多くの情報機器を集めようとすると、①排出元に対して高い買取価格を提示する、②排出元にとってコストとなるデータ消去費用を安く設定する、というどちらか、またはその組み合わせしかない。
データ消去など処理費用を無料や格安にして情報機器の買い取りを拡大してきたのがブロードリンクだ。法人から出る廃パソコンは年間700万~900万台あり、そのうち約300万台がリユースに回るとされる(残りは廃棄ルート)。ブロードリンクはそこで約90万台を扱う業界トップの地位を築いた。