公開延期、休館…コロナの影響直撃の映画業界 1カ月閉鎖なら200億円の興行収入が「消える」

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3月中旬に、ワン・ビン監督にスカイプインタビューを行った際に、公開延期について尋ねると、「仕事で中国に戻っていたが、かれこれ50日くらい中国でカンヅメ状態になってしまった。日本での公開が延期になるという決断は理解できる。中国でもそうだったから。とにかく健康第一なので、いい時期を選んで、観に来てほしい」とメッセージを発していた。

映画『死霊魂』は4月4日から6月27日延期。公開日が決まらない作品も少なくない ©LES FILMS D’ICI-CS PRODUCTIONS-ARTE FRANCE CINÉMA-ADOK FILMS-WANG BING 2018

今回の延期を決定した経緯について「公開延期は東京のメイン館であるシアター・イメージフォーラムさんと話し合って決めた。映画を観たいという観客と、今は映画館に行くのは不安だという観客と、両方いるため判断は難しかった」と明かしたのは、同作の日本での配給を担当するムヴィオラの武井みゆき代表だ。

「延期の決定は映画館への休業要請が出る前だったが、映画館は興行場法に定められた厳しい換気基準をクリアしているにもかかわらず、自主的に公開延期することで”映画館=換気が悪い”という風評被害につながるのではという懸念もあった。ただ、『死霊魂』は8時間超えの映画なので、第三者と同じ空間に長時間滞在することになり、2時間の映画よりも不安を感じるお客様も多いと考え、上映延期を決めた」と振り返る。

延期増え、公開作品集中すれば期間や上映回数縮小

だが、公開延期を発表した3月27日よりも半月ほどが経ち、状況は大きく変わってきている。

「今となっては、世界、そして日本の感染状況をみても飛沫・接触感染の防止や3密を避けるという段階を超え、『家にいる』ことが感染拡大防止の最善策になっている。だから延期はやむをえなかった。今のところ6月27日の東京公開を皮切りに、順次全国で上映していく予定だが、状況を見極めつつ判断していくことになると思う」(武井代表)

この作品だけでなく、ほかの小規模公開作品も同様の状況だ。あるフリーランスの宣伝マンは次のようにこぼす。

「単館系の作品は本当に厳しい。小規模の作品では、ロビーに置いてあるチラシや、本編上映前に流れる予告編など、映画館の来場客にいかに見てもらえるかが大切。しかし映画館に来てもらえなければ、チラシも手にとってもらえないし、予告編もなかなか見てもらえない。

そもそも映画の公開本数に対して、劇場が圧倒的に足りない状況。その中で公開延期が相次げば、今後、短期間に多くの作品が集中して公開される事態になり、1日の上映回数や公開期間が想定より減らされてしまう可能性がある。当然、入場料収入も少なくなり、赤字は避けられない状況になる」

国内の年間公開作品は1200本以上にのぼっており、今後も公開予定作品が控えている。映画館の休館が長引けば、公開されても上映期間の短縮を余儀なくされるかもしれない。

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