トヨタ「スマホ連携ナビ」拡大展開が招いた不評 昨秋に導入するも、わずか半年で軌道修正へ
ではなぜ、トヨタは一足飛びに標準搭載へと踏み切ったのか――。「車内でもスマホアプリを使いたいお客さんが増えている。そうした昨今のニーズに対応した」と会社側は説明するが、それ以外にも重要な狙いがある。「T-Connect」の利用者を一気に増やすためだ。
T-Connectはトヨタが提供するコネクテッドサービス。車とトヨタスマートセンターを通信で結ぶことで、オペレーターサポートや事故・急病時の緊急通報、盗難時の車両位置追跡、車の状態確認など、自動車にかかわるさまざまなサービスを提供する。基本的には有料サービスだが、会員登録すれば車の購入から5年間は無料での利用が可能だ。
ただし、こうしたサービスを利用するには、通信接続の環境条件を満たすことが大前提。これまではトヨタが用意した純正のT-Connectナビを搭載するか、市販の通常ナビを使っている場合はDCM(Data Communication Module)と呼ばれる車専用通信機の追加装着が必要だった。
これではいくら有益なサービスでも利用条件のハードルが高く、加入者はおのずと限られてしまう。そこで今回のDAの登場だ。DAにはDCMが装着済みで、スマホと接続して使うので、DA搭載車種の購入者は、意図しなくても自然とT-Connectサービスを利用できる通信環境が整っている。それこそがDAの標準搭載化の狙いだ。
一番の目的は「顧客の囲い込み」
では、トヨタがT-Connectの会員を増やすメリットはどこにあるのか。一番の目的は顧客の囲い込みだろう。T-Connectナビと同様、DAは車両に組み込まれた走行情報記録装置とつながっており、アクセルやブレーキの踏み込み方、速度などの走行情報や走行距離など、さまざまなデータがトヨタのサーバーに吸い上げられる仕組みだ。
こうしたデータをもとに、顧客に対して運転のアドバイスや最適なタイミングで整備の案内ができる。「こうしたデータを活用することでお客さんとの関係をより密にして、将来の新車販売にもつなげてほしい」。あるカローラ販売店の店長によると、トヨタがDA標準搭載を打ち出した際、販売店にはそんな趣旨の説明がメーカー側からあったという。
また、ある販社の幹部は、T-Connectの普及は未来への布石だと見る。「まずはすべての車をコネクテッドにして膨大なデータを収集する。次にトヨタはそうしたデータを使って、自動運転の高度化やスマートシティなど、ビッグデータを使ったサービスへつなげるつもりだろう」。
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