再建中の東芝が「東証1部復帰」にこだわる事情 株価を引き上げ、アクティビスト追い出しへ
だが、株価上昇には東証1部復帰のほか、解消すべき課題がある。アクティビストの多くもさらなるリストラを迫っている。
不採算事業として標的となっているのが、半導体事業などを含むデバイス部門だ。デバイス部門をめぐっては、2020年に入って異例の人事が発動されていた。東芝の執行役上席常務を務め、システムLSIを含むデバイス部門を率いてきた、東芝デバイス&ストレージ社長の福地浩志氏が4月1日から東芝グループの旅行代理店である東芝ツーリスト社長に異動になったのだ。
デバイス部門トップの「異例人事」
2020年1月に発表された人事で福地氏は、上席常務のまま、管掌が営業推進担当などへ異動する内容だった。しかし、2月になって突如、3月末で役員を退任する人事が発令された。
新たな行き先となる東芝ツーリストはグループ向けの旅行代理店であり、東芝関係者は「上席常務までやった人物が行くポジションではない。更迭だ」と語る。東芝再建のために送り込まれた三井住友銀行出身の車谷暢昭氏は、4月に会長兼CEO(最高経営責任者)から社長兼CEOへ肩書きを変え、綱川智社長を代表権のない会長に退けるなど、自身に権限を集中させる意向を見せている。福地氏の更迭も車谷氏による大ナタ人事との見方が多く、外部からの圧力もあったようだ。
福地氏の代わりに4月からデバイス部門を率いるのは、経営企画部長を務め、車谷社長からの信任が厚い佐藤裕之・執行役上席常務だ。その佐藤氏を支えるのが、4月から東芝本体の経営企画・経営戦略を担当するマッキンゼー出身の加茂正治・執行役上席常務だ。デバイス部門ではすでに400人規模の人員削減などを進めてきたが、佐藤氏と加茂氏が二人三脚で半導体部門の採算改善に取り組み、今後は事業売却も含めた抜本的な施策に踏み込むとの見方も出ている。
車谷社長にとって、2020年3月期決算は中期経営計画1年目の通信簿であり、1400億円(前期比3.9倍)の営業利益は必達目標だ。2019年4~12月期決算は、売上高が前年同期比7%減の2兆4586億円、最終利益はアメリカのLNG事業の売却損などで1456億円の赤字だった。本業の営業利益はインフラやエネルギー部門が堅調だったほか、パソコン事業など不採算案件の売却やリストラ効果で大幅増益になった。
だが、デバイス部門は四半期決算ごとに下方修正を繰り返しており、直近の2月にも通期の営業利益見通しを360億円から290億円に下方修正。多数の回路を1つのチップに集約したシステムLSIで成長を目指したが、データセンターが振るわず、車載向けもデンソーの採用等にとどまるなど誤算が続いている。新型コロナの影響も加わり、東芝グループ全体でみても営業利益目標達成への道のりは不透明だ。
もっとも、車谷社長の表情は意外と楽観的だ。経営危機当時より事業ポートフォリオをインフラ中心に再構築できているため、「新型コロナが東芝の業績に与える影響は限定的」と強気の姿勢を示している。はたして車谷氏率いる東芝は真の復活を果たすことができるか。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら