薬剤師が「処方箋の裏側」で密かに担う重責 医師が出した処方箋に訂正を求めるケースも
一方で疑義照会では、患者に必要な治療薬の不足がないかもお知らせする必要があります。例えば過去の処方履歴と照らし合わせたら、処方の中に足りない薬があったケースもあります。
患者視点に立つと、病院やクリニックでもいろいろ聞かれるのに、また薬局でヒアリングされるのもどうなのかという考えもあるようです。ただそれらの情報がなければ本当に安全に処方薬を提供してよいか、厳密には判定できないのです。患者からは説明はいいから早く渡してくれというケースもありますが、疑義を残したまま渡しては義務違反になるため、むずかしいところです。
疑義照会はシステムでは代替ができない
こうした疑義照会が人手ではなく、システムで防げないのか、という議論も出てきています。院内薬局など処方元(病院)により近い位置で疑義が潰せれば誰にとってもそれがよいはずですが、街のクリニックなどは通常そういった1次チェック機構はないので、より疑義が生じやすい可能性はあります。特に手書きの処方箋や省略文字は読み間違いを誘発しやすく危険です。
実際、多くの病院のシステムや、薬局のシステムで、過量処方、相互作用の禁忌、同種同効薬の重複などについてアラートをしてくれるものもあります。それらは補助として有用ですが、医師や薬剤師の判断を代替するまでには至っていません。
薬局の待合室に立ち返ってみましょう。疑義照会は薬剤師が処方箋の内容に関して、医師に電話やFAXで確認をする行為ですから、患者さんの待ち時間が数分は延びるわけです。年間2000万件を超える疑義にその分数を乗じたらどれだけの医療資源が割かれているのかと疑問が生じます。
ただし医師側も処方判断に悩むこともあります。複数の医療機関にまたがる処方箋を日常的に受ける調剤薬局は、処方情報や患者情報が多く管理され、薬物治療を中立な目線で考えることができる稀有な立ち位置とも言えるでしょう。単に処方薬を渡すのみではなく、疑義照会なども通して、患者に安全かつ適正な医療を提供することに、薬局の存在意義はあると言えます。
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