コロナに「マスクは無意味じゃない」明確な根拠 直接防止効果はさておき社会のために必要だ

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――どういうことですか。

密閉性が高く高性能のフィルター効果を備えたマスクを隙間のないようにきちんと装着した場合、呼吸に大きな負担がかかります。私は16年前、SARS(重症急性呼吸器症候群)がアジア地域で広がった後の2004年にマスク着用時の人の呼吸について実験を行い、解析しました。その結果、密閉性の高い高機能のマスクではなく普通のマスクでも、着けた人は普段よりも肺に負担がかかることがわかりました。

村上周三(むらかみ・しゅうぞう)/ 東京大学名誉教授。工学博士。一般財団法人建築環境・省エネルギー機構理事長。1965年、東京大学工学部建築学科卒、東京大学教授、慶応義塾大学教授、空気調和・衛生工学会会長、日本建築学会会長、独立行政法人建築研究所理事長、新国立競技場整備事業・技術提案等審査委員会委員長などを歴任。専門研究分野は建築環境工学、数値流体力学。77歳(撮影:河野 博子)

マスクを隙間のないように着けると息苦しさを感じます。肺への負荷が大きくなっているからです。医療現場で本格的なマスクを着けることが多い医療関係者からも、息苦しいという話を聞いています。さらに問題は、息苦しくなると鼻だけではなく口からも息を吸うことになります。すると人間が本来持っている鼻のフィルター効果が活用されないことになります。また、マスクを着用すると再吸引率が高くなります。すなわち、自分が吐き出した空気を再び吸引する割合が高くなり、清浄で新鮮な空気を吸引する割合が減るというマイナス面も指摘されます。

適切なマスクの利用方法、空気感染への警戒

――そうすると、適切にマスクを使うには、どうしたら?

飛沫汚染防止という他者のためのマスク着用は、公衆道徳の面からも大変必要性が高いと思います。一方で、1人でいるときや、ほかの人と離れた場所にいる場合は、マスクを着けたままにしておく必要はあまりないと思います。私の場合、寒い日に外にいるときはのどの保護のつもりでマスクを着けることが多いです。

――新型コロナウイルスは、空気感染するのでしょうか。

くしゃみなどで飛ぶ飛沫による飛沫感染や、飛沫が付着したものを触ったことから自分の手から口へ、などの経路で体内にウイルスが入ってしまう接触感染が主な感染ルートだとされてきました。しかし、最近の報告では空気感染の危険性が指摘されています。中国政府は2月に新型コロナウイルスによる肺炎の診療指針改定版を発表しました。その中で、空気中を浮遊する微小な粒子、エアロゾルによる感染はありうるとしています。

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