東急責任者が語る、伊豆「観光型MaaS」の儲け方 「単独では儲からない」が、ビジネスになる

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このように気持ちが揺れていたという森田氏だが、実際に伊豆に赴いて現場を見聞してまわる中で、ある解をつかんだのだという。

象徴的な取り組みだった、地元のタクシー会社3社が協同で運行したオンデマンド乗り合いバス(上)。AI(人工知能)が乗客の予約状況に応じて最適な経路を選択し運行する。家庭のテレビ画面からリモコンで予約できる仕組みも導入した(下)(筆者撮影)

それは、「伊豆も高齢化による人手不足が進んでおり、充実したアナログサービスを今後も同じ水準で提供し続けるのは難しい。そこで、ITの力を使って業務を省力・最適化し、人手不足を補いながらサービスレベルを維持するサイクルづくりを進めるなど、地域課題を解決することこそが日本のMaaSに課せられた使命ではないか」というものだった。

実証実験において一番のネックになったのは、やはりMaaSの知名度だ。最近は報道で耳にすることも多くなってきたものの、実証実験を開始した当初は説明会などを開催しても「MaaSって何?」という反応がほとんどだった。実際、フェーズ1においては、デジタルパス類の販売はわずか1045枚と、目標だった1万枚の10%にとどまった。

アプリからウェブ形式に

ところが、フェーズ2では同じ3カ月の期間中、後半は新型コロナウイルス問題の影響を受けたにもかかわらずトータルで5121枚を売り上げ、セールスが大幅に飛躍した。

どのような施策を行ったのか。1つは、サービスをアプリ形式からウェブブラウザ上での提供に切り替えたことだ。

Izukoは、デジタルフリーパスを購入すればスマホの画面を見せるだけで改札を通過できるシステムだ(筆者撮影)

「フェーズ1期間中のコールセンターへの問い合わせ278件中、アプリのダウンロードの方法がわからないというのが150件と半数以上だった。サービスを使っていただく前段階での障壁を取り除く必要があった」(森田氏)

ウェブシステムに切り替えたことで、サイト画面や商品設計を柔軟に見直せるようになったのも大きいという。

「日々のお客様の購買傾向・周遊経路などのデータをすぐに把握できるので、その地域で『刺さる』商品などを分析し、駅ごと・地域ごとにチラシを作り替えるなど、プロモーションにおけるPDCAを高速に回すことができた。また、風雨で運休になった観光施設のチケットの売り止め対応を行うなど、お客様に迷惑をかけないためのアクションも取ることができたのが満足度向上につながったのではないか」と森田氏は分析する。

また、フェーズ2ではサービスエリアを大幅に広げたことも使いやすさの向上に貢献した。中でも、熱海―伊東間のJR伊東線がサービスエリアに加わったことで、「熱海起点で伊豆を周遊する観光客にIzuko利用を訴求できた」(森田氏)という。

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