富山LRT、直通運転で消えた便利な「セルフ乗車」 2022年開業予定の宇都宮では導入目指すが…
セルフ乗車は乗客のモラルに依存する方式であり、「ただ乗り」を物理的には防ぐことはできず、抜き打ちチェックに出会う確率も低いのは事実である。このことから、「正直者がバカを見る」と感じる乗客は少なくないだろう。
では、不正乗車をする乗客はどのくらいいるのだろうか。2019年3月12日付の中国新聞は広島電鉄が実施した調査結果について次のように報じている。
これは乗客のモラルの問題だが、運賃の支払い方にも問題がある。ICカード利用客は、後扉(乗車専用)から乗車する際にリーダーにタッチするが、現金や1日乗車券の利用客は何もせずに乗車してよい。問題点は、乗車時にリーダーにタッチする必要のあるICカード客と、何もしないでよい現金客が混在していることだ。これでは、ただ乗り犯が何もせずに乗車しても、怪しまれたら現金客だと言えばよい。降車は車内の乗客の目が届きにくいから乗車扉からICカード客に紛れてサッと降りてしまえば逃げられる。
ヨーロッパに学ぶただ乗り防止策
ただ乗り対策はヨーロッパでのセルフ乗車導入当初の対策が参考になる。ヨーロッパでセルフ乗車を開始したときのただ乗り抑止策は、乗る人すべてに同じことをしてもらい、それをしない人はただ乗りと判別できるようにすることだった。
具体的には、乗客は乗車前に乗車券を購入して、乗車したら車内に設置してある刻印器で乗車券に乗車日時を刻印する。この刻印するという動作とこの時に刻印器が発するチンという音で「自分は正当な乗客である」と周囲の乗客に示す。
乗るときに全員に同じことをしてもらうことが肝心で、乗車するとそこには乗客の目があるから、何もしないで乗るのは難しいからだ。これで不正乗車は抑止されセルフ乗車は定着した。
ただし、セルフ乗車が当たり前になった現在では、例えば24時間券は最初に乗車するときだけ刻印(ICカード乗車券はタッチ)、定期券などは所持しているだけでよく、刻印(タッチ)する必要のない正当乗客が多いので、乗客の動作だけで正当か不正かを見分けることは不可能だ。
こうした状況を見て、「刻印(タッチ)をする人は少ない。不正乗車が多い」などと言いふらす日本人がいるが、抜き打ちの乗車券チェックに遭遇したときに観察すると、不正乗車はほとんど見かけない。
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