富山LRT、直通運転で消えた便利な「セルフ乗車」 2022年開業予定の宇都宮では導入目指すが…
路面電車の停車時間と輸送力は乗務する車掌の人数次第となるが、それには限度があり、路面電車は停車時間が長く輸送力が小さい乗り物である。これが路面電車の「弱点」であり、都市公共交通として活用することが難しい点だ。
1954年に名古屋市電は人件費削減のためにワンマン運転を始めた。車掌の仕事を運転士が肩代わりした。この「運転士が運賃を収受するワンマン運転」がわが国の標準となり、今日まで実に60年余も続いている。運転士の監視の下に乗客1人ずつ順番に1列になって運賃箱に運賃を投入、あるいはICカード乗車券をリーダーにタッチ、または運転士に定期券を提示するから時間がかかって停車時間が長くなる。最近では長さ18mや27mの、車掌乗務時代には車掌が2人乗務していた車両でもこの方式でワンマン運転しているから、停車時間はさらに増加した。
ヨーロッパでは、スイスが1960年代半ばに路面電車の利便性と輸送力のさらなる向上に加えて人件費の削減に取り組んでいる。しかしワンマン化の手法はわが国とはまったく違った。
当時からヨーロッパでは連接バスが使用されており、インフラ設備費用が大きい路面電車は大量輸送で輸送コストを下げ、かつ、パーク&ライドやバス&ライドに対応するために、より大型の車両の連結運転を目指していた。そのためわが国で標準である「運転士が運賃を収受するワンマン運転」は定員60人程度の小形車両のみに適用できる方式であるとして導入されなかった。
市民の力で路面電車の弱点を克服
代わって導入されのがセルフ乗車によるワンマン運転だ。チューリヒでは3車体連接車を2組連結した全長41m、定員336人のワンマン路面列車が走りだした。人件費の削減はもちろん路面電車の機能と利便性が飛躍的に向上し、1970年までに西ヨーロッパ諸国に普及した。実に、半世紀も前のことだ。
セルフ乗車は、車掌の運賃収受の仕事を乗客がセルフサービスで肩代わりする方式で、運賃収受は乗務員がせざるをえないという路面電車の「弱点」を市民(乗客)の協力で克服した。乗客は、乗車前に停留所の券売機で乗車券を買い、乗車後に車内扉脇に設置された乗車券刻印で乗車券に刻印(要は乗車券のチェック=改札)する。係員による抜き打ちのチェックをおこなって、不正乗車には高額の罰金を科して抑止する。
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