野田線「アーバンパークライン」やはり浸透せず 愛称導入から6年、路線の実力は高まったが…

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だが、これは環境の良さや暮らしやすさの裏返しとも言える。確かに、憧れや高級感のある路線とは言えないだろう。調査結果でも「高級感がある」は2.1%、「憧れがある」はわずかに1.8%だ。しかし、沿線は利便性の割に比較的不動産価格が安く、若い世代が暮らすにはちょうどいい。

とくに、アーバンパークラインはつくばエクスプレスとの乗り換え駅である流山おおたかの森駅を中心として、千葉県流山市内に多くの駅が存在している。つくばエクスプレスの開業以来住民が増加している同市は住宅地や商業施設の立地が進み、子育ての環境も充実していることで若いファミリー層の人気を集めている。

大宮公園駅の駅舎(写真:工場長/PIXTA)

東武が沿線住民に「住みたい街」を調査したところ、1位は柏、2位は流山おおたかの森、3位は大宮と、利便性の高いところが上位となった。一方、「穴場・好きな街ランキング」でも1位に流山おおたかの森がランクイン。2位は清水公園、3位は大宮公園と、「公園」が駅名に入る街が入った。「子育てに良い街」では、流山おおたかの森が1位だった。

子育て世代がプライベートを大切にし、のびのびと過ごす、というライフスタイルが想像できる。そういった人々に選ばれる沿線になっているのだ。

今後も発展、愛称の定着は…

アーバンパークラインは、2019年12月15日に逆井―六実間が複線になり、1964年に着手した柏―船橋間の複線化工事を約半世紀かけて終えた。

この完成を受けた2020年3月14日のダイヤ改正では、全線で急行列車の運転を開始。夕・夜間のラッシュ時、柏―船橋間の所要時間は30分から急行利用で最速19分へと大幅に短縮され、東武は同区間で1日あたり9000人の輸送人員増を見込んでいる。また、特急「アーバンパークライナー」の柏―春日部間の列車も新設した。平日の終電は最大29分繰り下げられ、深夜の利便性も上がった。

浸透しない愛称や「ダサい」などといろいろ言われてしまうアーバンパークラインだが、実際のところは充実した路線であり、今後も注目度は高くなっていくだろう。このままずっと野田線と呼ばれ続けるのか、あるいはアーバンパークラインの愛称が定着していくのかはわからない。しかし、今後も成長を続けていく路線であることは、確かだと考えられる。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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