「日本は生産性が低い」最大の原因は中小企業だ 誰も言い出さない「生産性の衝撃的な本質」

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先ほど、「3000人の労働者を3社に1000人ずつ分配するより、1社の大企業と従業員2人の1000社に配分したほうが生産性が下がる」と書いた理由はここにあります。日本の生産性が低い根本的な原因は、国民の価値観や文化の違いではなく、国全体の産業構造にあるのです。

日本には、国全体の生産性の低さを示すデータや、業種別のデータはあります。しかし私は日本国内において、日本の中小企業の生産性がどれだけ低く、大企業の生産性はどのくらいなのかという総合的なデータはほとんど見たことがありませんでした。

その点、『中小企業白書』のデータはたいへん貴重です。生産性を議論する際には、このデータがなければ始まらないと言っても、決して過言ではありません。

大企業・中堅企業こそ「国の宝」だ

日本では、規模の小さい小規模事業者や中小企業をやたらと美化して捉える傾向があります。こういう小さい企業が奮闘して、悪役の大企業を打ち負かすというストーリーのドラマや映画がヒットするのは、この風潮を明確に物語っています。

物語中で美化するのは何の罪もないので別に構いませんが、中小企業の生産性が低いという厳然たる事実から目をそらしたり、ごまかしたりするのは感心できません。

企業の規模が小さいほど生産性が低くなるというのは、世界中で確認できる経済の鉄則です。この鉄則にのっとり、先進国では小規模事業者で働いている労働者の割合が大きくなるほど、その国の生産性は低くなっています。逆にアメリカのように、ビッグビジネスが大好きな国の生産性が高いのも厳然たる事実です。中堅企業が産業構造の中心になっているドイツも、生産性が非常に高くなっています。

日本では、全企業の99.7%が中小企業です。これらの中小企業をひとくくりにして「日本の宝だ」というのは、究極の暴論です。冷静な目で見ると、中小企業は日本という国にとって、宝でもなんでもありません。宝なのは、大企業と中堅企業です。

特別な理由がないかぎり、小規模事業者や中小企業に「宝」と言えるような価値はありません。将来、中堅企業や大企業に成長する通過点としてのみ、価値があると言えます。永遠に成長しない中小企業は、国の宝どころか、負担でしかないのです。

新刊『日本企業の勝算』では、先進国各国の生産性の違いが産業構造の違いにあるという仮説を検証しています。そのうえで政府の経済政策が産業構造に極めて大きな影響を及ぼし、決定づけているということを、客観的なデータを使って明確にしています。本連載と合わせて、こちらもぜひご一読ください。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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