黒字でも休止、上野モノレールに復活はあるか 遊戯施設以上の存在だったわずか300mの鉄道

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小学校の図工の時間には、子どもたちの多くが未来のまちの予想図として、そこにモノレールの絵を描いていた。小学生が描いたモノレールは、どれもがアニメに出てくるような少し奇抜な格好をしていて、しかし建ち並ぶビル街の間をスマートに走り抜けていたのである。

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もちろん、大人の側もより現実的にモノレールの未来像を描いていた。当初の計画には上野モノレールが上野公園の中を一周する環状運転を行うというものもあり、もしもこれが実現していたら、上野モノレールの価値はもっと高いものとなっていたかもしれない。

東京都交通局も、上野モノレールの利用状況とその可能性については開業後も調査を続けていた。その回答として、モノレールには渋滞に巻き込まれることのない交通機関としての可能性があるが、増発運転や、列車の増結を行うことが難しいという欠点を有しており、絶えず変動する輸送需要へのフレキシブルな対応ができないことが報告されている。

この指摘は的確なもので、空中に軌道を設けるモノレールであるだけに、留置線などを造るにしても物理的な制約が大きく、費用もかかる。地上に留置線を増設していけばいい通常の鉄道よりも、何かと手間がかかるのもモノレールという交通機関なのである。

子どもの夢を奪ってはいけない

それでも、と思う。それでは日本という国からモノレールという交通機関が絶滅してしまったのかというと、そういう訳ではない。羽田には空港アクセスに大きな役割を果たしている路線が健在だし、大阪のモノレールは既存の鉄道を短絡する役割を担いネットワークの高密度化に貢献している。どちらの路線も、黎明期の動物園のモノレールよりもはるかに大きな輸送需要を捌き、モノレールという交通機関の本来の役割をまっとうしている。

確かにどちらの路線でも増結などは行われていないが、インフラが計画的に整備されていれば、大きな輸送需要に対応できることは、これらの路線が立派に証明している。もしも、これらの路線が運行を休止してしまったらどうなるのか。結論は簡単だ。東京と大阪の交通が麻痺する。

上野モノレールは現在に至るまで黒字を計上しているという。つまり、全国で多くの路線が姿を消す理由になった営業成績の不振は、この路線には当てはまらないということだ。

多くの人に愛され、上野のシンボルとなり、黒字も計上しているモノレールを休止し、あるいはもしかしたら廃止してしまおうとする理由は何なのだろう。子どもの夢を奪うのは、いつも大人の仕業……。そんな言葉が生まれてはならない。

池口 英司 鉄道ライター、カメラマン

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いけぐち・えいじ / Eiji Ikeguchi

1956年東京都生まれ。日本大学藝術学部写真学科卒業後、出版社勤務を経て独立。著書に『国鉄のスピード史―スピードアップがもたらした未来への足跡』(イカロス出版)、『鉄道時計ものがたり―いつの時代も鉄道員の“相棒”』(共著、交通新聞社新書)、『JR旅客6社徹底比較』(河出書房新社)、『さらに残念な鉄道車両たち』(イカロス出版)等。

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