プロ野球を辞めた男たちを待つ「甘くない現実」 サポートが整っても肝心なのは本人の意思だ

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「最初、誘われたときは即答できませんでした。具体的に何をやるのかわかりませんでしたから。いろいろ調べてわかったことは、簡単に言うと、選手の役に立つのが仕事。だったら、自分にも経験を生かして役に立てそうだと思って、決断しました」

「引退後の選手のサポートに関して、”選択肢を増やす”ということを選手会事務局としてメインに取り組んでいます。現役の頃から多くの情報に触れられるように研修を行い、そこでは引退後に活躍している元選手についても紹介します。戦力外通告を受けた選手には全員に電話し、相談にはいつでも乗れるように準備をしています。また、昨年からは退団研修会といって、戦力外通告を受けた選手を対象に研修会を行いました」

引退した選手の選択肢が増えるよう、選手会事務局としてサポートに取り組んでいる(写真:梅谷秀司)

民間企業の中にも、協力体制はできつつある。ソフトバンクヒューマンキャピタルは、引退後のアスリートを中心に再就職先を支援するサービス(イーキャリアNEXTFIELD)を2014年から開始している。ここには900社を超える企業が登録をしており、引退後の選手の選択肢を増やす一助となっている。

また、國學院大學とプロ野球選手会が提携し、引退後の選手は(高卒に限り)入学金と授業料を4年間免除にするというサポートを開始した(Jリーグはリーグとして提携しており、元Jリーガーも同様のサポートを受けられる)。現在、3名の元プロ野球選手が大学生となっている。

しかし、サポート体制がいかに整おうと、肝心なのは引退後のアスリートが自らの意思で次の一歩を踏み出す勇気と覚悟である。ここに関しては、選手側のマインドがいかに育つかにかかっている。

「野球しかやってこなかったからと、悲観する必要はまったくありません。目標を達成するために日々のプロセスを組み立てること、やり抜く力などは、必ず社会に出て使うことができます。だから、自信を持って次の世界に進んでいってほしい」

元選手が持つべき大切なマインド

そのために大切なことは2つあると、森氏は続ける。

「まずは、競技に対する未練を完全に断ち切ることです。だからこそ、現役のうちに”やり切った”と言えるくらいやってほしいのです。そして、やりたいことを見つけることです。ただ、これに関しては私も苦労しました。だからこそ、やりたいことを見つけるためにワンステップ置く必要があるかもしれません。そのワンステップは、事務局が作っていかなければならない課題と言ってもいいかもしれませんね」

引退後の生活に対する不安をなくすため、事務局のサポートは日々構築されつつある。それでも、選手にとって不安の種は尽きない。その原因の1つは、圧倒的な情報の少なさである。

第2回では、プロ野球選手を引退後に公認会計士となった元阪神タイガースの奥村武博氏のストーリーから、この問題とどう向き合ったのかを読み解いていこう。

※情報はすべて、一般社団法人日本野球機構発行の『NEW BALL』参照。『NEW BALL』は、プロ野球選手・OBのためのキャリアサポートマガジン。毎年1回発行。今回の情報は、2019年11月発行のものより。

高森 勇旗 元プロ野球選手

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たかもり ゆうき / Yuki Takamori

1988年生まれ。富山県高岡市出身。中京高校から2006年横浜ベイスターズに高校生ドラフト4位で入団。田中将大、坂本勇人、梶谷隆幸らと同学年。2012年戦力外通告を受けて引退。ライター、アナリスト、マネジメントコーチなど引退後の仕事は多岐にわたる。

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