ビジネスから教育まで自由自在 地頭力はこう鍛える。
これら五つの問題は、実は外資系コンサルティング会社の面接試験で実際に出された問題である。なぜ、コンサル会社の面接に、このような質問が必要なのだろう。それは経営課題の解決に必要とされる能力の有無を、このように容易には答えを出せない問題から試せるからだ。
「コンサルタントの仕事で顧客の経営課題に向き合ったとき、大切なのは自分の思いつきで解決策を提示するのでなく、まず経営の全体像をとらえ、課題解決に向けた最適なアプローチを選び出すことです。だからこそ、あえて知識では太刀打ちできない問いを出すことで、応募者の思考プロセスを試すわけです」
転職者向け支援サイト「コンサルタントナビ」を運営するティンバーラインパートナーズの大石哲之氏はこう解説する。
今や外資系コンサル会社だけでなく、国内企業にもこのような”考える力”は求められている。ビジネスシーンで求める「考える力」を115社の人事担当者にアンケートしたところ、「問題を先読みできる能力」(サービス)、「相手の状況や言動から自分が何をすべきか瞬時に察知する」(住宅・インテリア)など、本で読んだ知識力では解決できないものばかり。前例のない課題にも自分の頭で回答を導き出せる、本当の意味での思考力が求められているのだ。
1から100を作るより0から1を作れる人材
こうした”考える力”を持つ人材を呼び込もうと、採用時から工夫をしている企業もある。東京・六本木にあるパッケージソフトなどの開発会社ワークスアプリケーションズ。同社では毎年1800人もの学生を受け入れる「問題解決能力発掘プログラム」と呼ばれるインターンシップを実施している。応募者は約1万8000人。その中から選ばれた10分の1の学生に、「コンビニエンスストアを合理化する仕組みとシステム」などの課題を与え、ひたすら頭を使って考えさせる。ツールも方法も何も教えず、学生は一人でゼロから事業設計書を書き上げ、ソフトウエアを作り上げなくてはならない。同社代表の牧野正幸氏が、インターンシップ導入の狙いを語る。
「新しいビジネスを生み出すには、1から100を応用できる人材よりも、0から1を作れる人材のほうが重要。しかし学校教育は、いまだに1から100を応用できる人材の教育が主流。だからこそインターンで徹底的に考えさせる課題を出し、人材を発掘しようとしている」
ここでいう「考える力」を持つ人材とは、言い換えれば、あらゆる問題解決のベースとなる能力を持つ人、つまり冒頭に掲げた「地頭力」のある人ということになる。地頭力は何も難しい経営課題を解決するためだけの能力ではない。行列の待ち時間をどう予測するか、子供の学力を伸ばすためにはどうすべきか。考えることで状況を改善できる機会は、日常生活の至る所にある。
(週刊東洋経済編集部、Main Designer:大塚博子)
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