Jリーグ94試合延期の英断も拭いきれない不安 新型肺炎対策で日本代表戦や五輪に暗雲漂う

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2月23日のJリーグ・ヴィッセル神戸の開幕戦では観客席がマスク姿で埋め尽くされていた(写真:西村尚己/アフロスポーツ) 

「新型コロナウイルス感染症の拡大で、われわれは大きな意思決定をしました。明日(26日)開催予定のルヴァン(カップ戦)から3月15日開催予定のJリーグまでのすべての公式試合を延期することを決定しました。

24日の夜半に『この1~2週間が瀬戸際』という政府専門家会議の発表を受け、25日にクラブ実行委員とのウェブ会議を行い、全会一致で決断しました。ある種の国難ともいえる中、協力していく意思をお伝えします」

2月25日夕方、都内のJリーグ事務局で会見した村井満チェアマンは苦渋の表情を浮かべながらJ1~J3の全94試合の延期を発表した。Jリーグが自然災害以外で中断するのは初めて。国内主要プロスポーツが新型肺炎の感染拡大による影響で日程変更に踏み切ったのも初めてで、インパクトは非常に大きい。

「Jリーグの素早い対応は素晴らしい」と称賛する声も聞こえてきて、現時点では多くの人々が好意的に受け止めている様子だ。こうした動きが影響したのか、安倍晋三首相が26日昼に今後2週間の大規模イベントの中止・延期、規模縮小を政府として要請することを表明。他のスポーツなども追随することになりそうだ。

当面3週間の試合開催を延期した経緯

2020年シーズンのJリーグは21日の湘南ベルマーレ対浦和レッズ戦から開幕したばかりだった。先週から新型肺炎が拡大傾向にあったため、Jリーグ側としては運営スタッフやメディア関係者のマスク着用を必須とし、観戦客の入場ゲートやトイレには消毒液を設置し、医師や看護師も増員するなどの対策を取っていた。

23日のヴィッセル神戸対横浜FC戦が行われたノエビアスタジアム神戸に至っては、チャント(応援歌)や肩組みなどの接触行為、応援道具の持ち込みなどを禁止する超厳戒態勢が取られていた。

こうした努力の成果もあって、25日までに選手やスタッフ、観客に感染者が出たという情報はなかった。このため、関係者の間では「2月28日~3月1日の第2節以降も問題なく実施できる」という前向きなムードも広がり始めていた。

ところが、村井チェアマンが語ったとおり、24日夜に政府の専門家会議が出した「今後1~2週間が拡大と終息の瀬戸際になる」という見解が状況を一変させた。感染拡大が爆発的に広がっている韓国が同日、サッカーKリーグ開幕を無期限延期に踏み切ったとも多少なりとも影響したのだろう。Jリーグも休止の方向に傾き、当面3週間の試合開催を取りやめることになったのだ。

今後に向けて、国民全体の問題として真っ先に考えなければならないのは新型肺炎の感染拡大をどこまで食い止められるか。そんな中、Jリーグとしては今回休止となった94試合をどこに組み込むかという問題ものしかかる。今年は7月24日~8月9日まで東京五輪が開催されるため、7月4~5日の週末でいったんリーグを休止し、8月14~16日の週末に再開するという変則スケジュールになっているのだ。

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