ただ、合同説明会を中止しても、「企業にとっては、影響は少ないのでは」(就職情報会社の関係者)という声があがる。なぜなら、就活の中心は、企業別の説明会や選考に移っており、企業側もすでに開催したインターンシップの参加者を選考の候補者として学生にアプローチ中だからだ。
2020年卒の就活生までは、経団連が加盟企業向けに設定していた「就活ルール」をベースに進んでいた。企業が学生に採用要項を発表し、会社説明会などを開催する解禁日は3月1日以降、面接などの選考を開始するのを6月1日以降としていた。しかし、経団連が2018年に廃止を決定した就活ルールは、政府が主導して決める形になったが、企業や業界団体に「要請」するだけにとどまっている。
そのため企業は3月以前に学生と接触し、選考などを進めているのが実態だ。キャリタス就活を運営するディスコが発表した就職意識調査によると、2020年2月1日時点で、選考を受けた学生は前年より7.9ポイント増の47.8%となっており、受験社数も2.6社に達する。
また、内定を得た学生も10.0%と10人に1人となっている。大規模な就活イベントも学生の期末試験が終わる1月末から2月上旬頃がピークで、就活はすでに「後半戦」の様相となっている。
五輪控え日程調整難しい
むしろ影響が大きいのは、選考につながる会社個別の会社説明会の中止や延期だろう。各社は2月中に行う予定だった就活イベントの中止を表明しており、この流れは3月以降も続くと思われる。採用コンサルタントの谷出正直氏は、「不特定多数の人を集めるのは感染リスクが高い、と考える企業は少なくない」と語る。
選考についても、日程などの見直しを検討する企業が出ているが、今年は7~8月に東京オリンピック・パラリンピックの開催が控えており、学生がボランティアなどに参加することを考えれば大幅な後ろ倒しは難しい。2019年と同じように、4~6月を内定のピークにせざるをえないだろう。
そんな中、急速に企業の間で広まっているのが、WEBによる会社説明会や動画面接だ。実はWEB説明会は3~4年前から、動画面接は2019年ごろから普及している採用手法だ。
WEB会社説明会は、日程が合わない就活生や、地方在住で説明会に出席できない学生向けに拡大していた。今の就活世代がYouTubeなど動画サイトを中心に情報収集していることも、企業が取り組む理由としてある。
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