新型コロナのデマに踊る人々に映る深刻な錯乱

「最悪の事態に備えた行動」とは似て非なる

そのほかソーシャルメディア上では、紅茶や緑茶、ニンニク、唐辛子、生理食塩水による鼻孔の洗浄、うがい薬、さらには納豆がウイルスの予防に効果があるといった真偽不明の情報が続々と現れている。海外でも、ワインビネガーや大麻、漢方薬、ごま油を鼻孔に塗る、ステロイド、酢酸等々と枚挙に暇がない。漂白剤と同様の成分の摂取を勧めるものもあり、仮にこのような予防法を実践したら健康を損なうだろう。

上記のようなデマが一定程度の影響力を持つことになれば、かえってまともな予防法の励行がおろそかになり、結果的に感染リスクが高まる事態を招く。そのうえ、ソーシャルメディアなどで不安や恐怖をあおる情報を浴び続けることで、心身へのストレスや不眠症状などが生じて免疫力も低下するだろう。

④ 生物兵器説などの陰謀論

これは、新型コロナウイルスは人が作った「生物兵器」だとの陰謀論仕立てのデマだ。
すでに財新編集部が専門家の見解「新型コロナウイルス『生物兵器論』は本当なのか」(2020年2月12日配信)を東洋経済オンラインに寄稿しているが、説としては特段目新しいものではない。

2002~2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)は、「アジア人を狙い撃ちするために作成された人工ウイルスである」とのデマを、2010年代に入ってからもさまざまなところで人づてに聞いた覚えがある。

2015年に流行した中東呼吸器症候群(MERS)でも同じ噂を耳にした。また、インフルエンザウイルスについても「人為的に新型と大流行が作り出され、ワクチンメーカーとその投資家が利益を得る仕組みになっている」という説もある。

兵器だとしたら致死率が低すぎる

今回の新型コロナウイルスでは、中国軍が開発した生物兵器が漏洩した説、アメリカCIA(中央情報局)や米軍が開発した生物兵器を中国にばらまいた説などが出回っている。だが、前出の記事では専門家は「ゲノム編集(遺伝子編集)」の痕跡は観察されていないと明言した。

他媒体となるがビジネスインサイダー(BUSINESS INSIDER)で軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は、ゲノム編集の痕跡などが発見されていないことに触れたうえで、「生物兵器として人工的に開発されたものである可能性はほとんどない」と結論付けた(「新型ウイルス『中国が秘密開発した生物兵器』トンデモ説が駆けめぐった一部始終」2020年1月31日配信)。

そもそも致死率の低いコロナウイルスは「現実に兵器としての使用に向いていないのだと思われる」とも述べている。

今後、誤情報やデマによってもたらされる最悪の事態は、やはり何らかの形での人権侵害であり、暴力の扇動だろう。

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