観光気分では絶対に無理!「南インド」鉄道の旅 庶民の暮らしを運ぶ、鉄道のよさを再発見

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駅に跨線橋があるが、線路を渡る人や、線路脇が日常の道となっているので、頻繁に警笛を鳴らしながら走る。車内には次の駅などを告知する表示機があるが、「インド国鉄では1989年から屋根上と床下に乗ることは禁止されています」と出てくる。

窓に鉄格子があるのは窓からの乗車を避けるためだが、それでも窓から荷物を置くなどして席を取るため、新型車両では鉄格子ではなくフェンスになった。1等車があるが、階級社会のためで、設備の差はない。終日女性専用車もある。

運賃は初乗り5ルピー(約8円)、市内中心の駅から空港最寄り駅まででも10ルピー、(約16円)と激安である。1日券が70ルピー(約110円)だったので、私は損得勘定せずに4日間毎日1日券を購入し、近郊鉄道を全線乗ってみた。

終点まで乗車すると2時間弱かかる路線が多く、都会ではない南インドの車窓を楽しむことができる。市内中心部を過ぎると混雑が緩和されるので、物売りや施しを求める人たち(物乞いに近い)もやってくる。紅茶は10ルピー、パイナップルは20ルピー、食べ終えたコップや袋は平気で窓から捨てるので、線路際はかなり汚い。

近郊列車ではさまざまなことを感じる。電車は混んでいるのに駅の券売機は2台程度で、だいたい1台は壊れている。にもかかわらず券売機に列ができる様子もなく、乗客は「切符を購入しているのだろうか?」と思ってしまった。改札や検札もない。

郊外でも駅のホームは賑わっているが、ベンチにいる多くの人は鉄道利用者ではなさそうである。ずっと寝ている人、大勢で食事をしている人、ホームにある水道で洗濯、果ては行水と、駅が生活の場になっていた。「国鉄」なので「駅は皆のもの」と思われているのだろう。

いくらインドとはいえ、この儲かってそうに思えない鉄道に親近感を感じてしまう。「やっぱり国鉄はいいな」とも思えてしまった。

現地に馴染んでいなかったチェンナイメトロ

一方、インドらしさを感じさせない鉄道もあった。それがチェンナイ、ベンガルールにある2路線ずつのメトロである。近代的な設備で、市内中心部は地下を、それ以外は高架を走る。車両はチェンナイではアルストム製、ベンガルールではインド、韓国、日本の合作、エアコン完備、チェンナイの地下区間ではホームドアまで完備する。切符はトークン方式で、ICカードなら運賃が割引になる。チェンナイでは空港が終点なので空港アクセス交通も兼ねている。両都市とも女性専用車もある。ベンガルールメトロでは車端部に充電用プラグもあった。

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