春節明けの中国で新型肺炎の「退治」に総力戦 北京に最大700万人の労働者が地方から戻る

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またほぼ同時期の1月25日に雷神山医院(建設面積7万9700平方メートル、ベッド数は1600床)の建設も決定された。2月8日に患者を受け入れて正式に運営を開始している。さらに体育館などの公共施設や大学の寮も一時的に徴用され、患者の収容に使われた。

このように武漢では患者の集中収容と治療にまずは力を入れてきた。しかし、毎日数千人の患者が湖北省から出ており、感染を食い止めるまでにはとても至っていない。中国の中央政府は次の手として、大規模な医療関係者の派遣を始めた。

全国の医療部隊を武漢に集中させる総力戦

新華社の報道によると、2月8日の23時30分までに1万2215人の医師・看護師が湖北省に入り、それ以外に人民解放軍の医療チーム1400人が到着している。また湖北省の地方紙『楚天都市報』の報道によると、2月9日の一日だけで、41のチャーター機が武漢に到着し、6000人の医師・看護師を中国全土から派遣したという。

ここでは湖北省内のある一つの市に対して、その他の省が集中的に支援するという中国独自の支援方式が用いられている。たとえば重慶市と黒竜江省は集中的に湖北省孝感市を支援し、山東省と湖南省は黄岡市を支援する。全国の行政の力を湖北省に集中させているのだ。

湖北省での新型肺炎を食い止めれば、中国全土へのこれ以上の感染拡大のリスクを減らせる。さらに現地での治療ノウハウや感染予防の方法を中国全土へ広げていくことにより、新型肺炎を退治していきたいと中国の中央政府は考えている。

総力戦の戦果は果たしてどうなるのか。2月10日の仕事再開をきっかけに、徐々に減りつつあった新規感染者数がまた増加に転じることはないのか。しばらくは毎日更新されるデータから目が離せない。

陳 言 在北京ジャーナリスト

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ちん げん / Chen Yan

1960年、北京生まれ。1982年南京大学卒業後、経済日報入社。日本語通訳を兼ねて日本経済、アジア経済を報道。1989年から日本に留学、1999年に慶応義塾大学経済学研究科博士課程修了。2003年に中国に帰国し、月刊『経済』主筆、『中国新聞週刊』主筆を経て、2010年から日本企業(中国)研究院執行院長。2019年1月から月刊『人民中国』副総編集長。『中国鉄鋼業における技術導入』(萩国際大学出版会)など多数の著書がある。

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