本稿執筆時点の99%開票時の数字を見ると、2位のバーニー・サンダース上院議員とほとんど差がない。これなら同率首位と見なすべきではないのか。サンダース氏は前回の2016年選挙でも、当地でヒラリー・クリントン候補を相手に0.3%差で負けている。「アイオワ州には魔物が棲んでいるのか!」と今頃は嘆いているのではないだろうか。
候補者 州選挙人 % 獲得代議員数
ピート・ブティジェッジ元市長 564 26.2% 11
バーニー・サンダース上院議員 562 26.1% 11
エリザベス・ウォーレン上院議員 387 18.0% 5
ジョー・バイデン元副大統領 341 15.8% 2
エイミー・クロブチャー上院議員 264 12.3% 0
あるいはこんなことも考えてみたくなる。仮に開票が当日中に済んでいて、ブティジェッジ氏が感動的な勝利宣言をしていたらどうだっただろう。世の中の雰囲気は、一夜にして変わっていたのではないか。たぶん演説を録画したユーチューブは、何百万回転もしたことだろう。2008年のアイオワ州党員集会では、まさしくバラク・オバマ氏がそれをやって、一気に大統領まで駆け上がったものなのだが。
トランプ大統領は一般教書演説を現職らしく上手に利用
かくして民主党は最悪のムードで、翌2月4日の一般教書演説を迎えることになる。年に1度、大統領が議会に赴いて施政方針を述べる機会である。演説は何度もスタンディングオベーションで中断される、というのが吉例となっている。
トランプ大統領の一般教書演説はこれが3回目。普段のツィートでは、弾劾裁判に対する文句や、民主党への悪口雑言が絶えない「やんちゃ坊主」だが、この日はそれらを封印して「大統領らしく」壇上に立った。
かつて「リアリティTV」番組の視聴率男として名を馳せたトランプ氏は、盛りだくさんのサプライズを用意していた。ベネズエラの反体制指導者、フアン・グアイド暫定大統領を会場に呼んで皆で激励したり、ガンで闘病中の保守派評論家、ラッシュ・リンボー氏を褒めたたえ、その場でメラニア夫人から「大統領自由勲章」を授与させたり。
きわめつけはアフガニスタンに駐留する兵士の家族を紹介し、「こうしたご家族の犠牲のもとに、今のわれわれの安全と平和がある」と持ち上げ、満場の拍手を受けさせた後、突然、「実はもうお父さんは帰国している」と明かし、その場で家族が感動の再会を果たす、というシーンがあった。正直なところ、展開は読めていたけれども、素直に感動してしまったぜ。
1時間半近い長丁場の中で、大統領は経済の好調さを強調し、みずからの業績を自賛し、保守派が大喜びするような公約を並べたてた。例によって多少怪しいところもあって、特に「アメリカの製造業が復権している」「ブルーカラーブームが来ている」と言っていたのは、フェイクニュースとは言わないまでも誇大広告だろう。アメリカ経済は確かに悪くないけれども、中西部のラストベルトまでが改善しているわけではない。
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