「武漢肺炎」で日経平均は最悪どこまで下がるか 投資家は情報の乏しい中どう向き合うべきか

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武漢肺炎は、明らかに株価に影響する大きな「材料」だ。だが、悲観・楽観のいずれに傾くとしても、現時点で分かっていることが少ない。

しかし、情報が乏しい中で、それでも時々に意思決定をしなければいけないのが「投資」であり、もう少し広く見ると「お金」というゲームだ。付け加えると、自分では参加していないつもりでも、例えばお金を預金に置いていても、預金以外の資産に置いているのだとしても、あなたはこのゲームに参加している。

最悪のケースは日経平均2万0600円程度

さて、武漢肺炎の全貌が見通せないときに、現在株式を持っているにせよ、いないにせよ、あなたはどうするのが正解だろうか。もちろん、時々に情報を集めるとして、「今の時点で」どう考えたらいいか。

最初に行うべきことは、悪材料としての武漢肺炎の最大値を見積もることだろう。例えば、武漢肺炎の報道前の日経平均2万4000円時点での東証1部の平均PER(株価収益率)は16.3倍で、益利回りは6.13%である。これを妥当だと考えて、仮に武漢肺炎によって永続的な利益成長率が1%低下するとした場合、益利回りは1%上昇しなければならない。この益利回りの変化を日経平均に換算すると、約2万0600円である。

筆者は、このあたりを武漢肺炎問題の最悪ケースと想定する。長期的な利益成長率をマイナス1%に想定するということは、長期的なGDP成長率が1%下がるくらいの大きな変化なので、基本的に「一過性」と思われる武漢肺炎の影響に対しては、多分過大な見積もりだろう。

仮にバランス・ファンドを運用しているとして、下限が2万0600円という材料をもとに例えば2万2000円台の株価で株式の組み入れ率をいったん落として、後で買い戻すことでリターンを改善する賭けに出ようとは思わない。取引コストと、予想の信頼度を考えると、全く自信が持てない。

株式のポジションを落として、下がった株価で買い直すことは、想像以上に難しい。個人投資家ばかりでなくプロの投資家も、よほどの確信と大きな下落の見通しがない限り、やらない方が無難だ。また、個人の場合は特に、ポジションを落とした後に見通しに反して株価が上昇して、その後に株式を買い直す機会を見つけ損なう失敗が少なくない。

他方、もちろん、武漢肺炎以外にも株価に影響する要因は多々あるが、仮にこの影響だけで2万0600円程度まで株価が下がるなら、これをチャンスと見て株式の組み入れ率を引き上げることは、個人投資家の場合でも、検討に値するだろう。本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

次ページここからは競馬コーナー。根岸ステークスの勝ち馬は?
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