「新型肺炎」二次感染、バス経営者が訴える恐怖 「訪日客ツアーバスの関係者に感染検査を」

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国土交通省自動車局も動き始めた。「観光庁と連携して、1月以降に武漢からの旅行者を受け入れたバス事業者を特定して、運転者に検査を受けてもらうようお願いする予定です」(安全政策課)

ただ、ここにも対策の漏れがある、とこの経営者は指摘する。「厚生労働省は日本人運転手の感染確認を発表した後に、ツアーガイドが感染したことを発表していますが、もしかしたら感染したのはツアーガイドが先だったのではないか」というのだ。

その理由はこうだ。「ツアーガイドは乗車中、乗客に向かってずっと話し続けるのが一般的です。行程中はツアー客と行動を共にしており、客と接触している時間は運転手より格段に長い。それに、ツアーガイドは中国人観光客の中でも武漢からの客相手など、それぞれ専門を持って活動しているから、はるかに接触している時間が長い」

ツアーガイドは、ガイド報酬以外に観光中の車内販売や買い物先の紹介手数料が収入の柱になっている。ツアー客の故郷と相性のいいガイドが、自然にすみ分けを作る。ツアーガイドはバスガイドと違って、通常はバス会社より旅行会社との関係が深い。

運転手に対する検査体制を敷くなら、バス会社の管理が及ばないツアーガイドにも同様の体制を敷くことがより効果的ではないかというのだ。

だが、観光庁の対策は後手に回っている。

「決してツアーガイド向けの対策をやらないというわけではありませんが、まずは旅行会社から利用したバス会社を聞き取らなければなりません。添乗員にも、ツアーガイド的な人から通訳の人までさまざまな種類があるので、把握し切れていません」(国際観光課)

訪日客ツアー減少で値下げ競争の懸念

貸し切りバス経営者はさらにもう1つ、感染拡大の影響で心配することがあると話す。値下げ競争が起きかねないのではないかという点だ。

「貸し切りバスの大半は季節産業です。とくに訪日客向けの貸し切りバスは、春節の時期に来日する中国人ツアーが大きな収入源です。今回の新型肺炎で打撃を受け、その損失を補填するためのツアー獲得のために値下げ競争が起きる可能性は大きい」

2012年4月に関越自動車道で起きた高速ツアーバスの居眠り運転事故や、2016年1月の軽井沢スキーバス転落事故など、ツアーバス事故の多くは値下げ競争の中で安全運行のコストを削ったことから起きている。旅行会社が「営業紹介手数料」という名目で、バス会社にリベートを求める構造の中で起きた競争。その引き金を新型肺炎が引きかねないというのだ。

軽井沢スキーバス事故以来、国交省は過大なリベート要求の防止対策を考えてきたが、運賃に対してどの程度の割合のリベートを求めているのか、実態はいまだに把握されていない。昨年8月、ようやくバス事業者が旅行会社に発行する運送引受書に、支払われるリベート金額が明記されるようになったが、その割合が適正かどうかを判断するためには、さらに時間が必要だ。

東京2020オリンピック・パラリンピックの開催による訪日外国人対応を間近に控えてはいるものの、まずは国民の安全・安心のため、訪日客と接する最前線である貸し切りバス事業者に対する効果的な対策が求められている。

中島 みなみ 記者

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なかじま みなみ / Minami Nakajima

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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