ヤマト、ネット通販の配送で周回遅れの改革 「自前主義」の脱却はどれだけ実を結ぶのか

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そうした中、今回とくに注目すべきは、主力のデリバリー事業でEC(ネット通販)配送の「自前主義」から脱却を図る点だ。

ヤマトは、荷物量の回復を見込んで午後の配達に限定した配達員「アンカーキャスト」の採用(2019年9月末時点で6500人)を進めており、自前の拡大路線を固持してきた。だが、1月23日に発表した「ECエコシステム」と称した新配送サービスでは、地場の中小運送会社などパートナー企業にも配送を委託する方針だ。

方針転換の背景に、宅配の取扱量を思ったほど確保できなかった苦い経験がある。2019年10月31日の中間決算説明会で、ヤマトホールディングスの芝﨑健一副社長は「(2017年9月頃から実施した)値上げにより荷主が離反し、(その影響が長引き)荷物量が想定を下回った」と話した。そのため、2020年3月末までにアンカーキャストを1万人にまで増やす計画だったが、採用はいったん凍結している。

EC事業者が自前物流を構築

EC向けの新配送サービスについて、長尾社長は会見で「自社で完結しない開かれたシステムを構築し、ECに最適なサービスを提供する」と述べたが、具体的な内容は明らかにしなかった。

1月23日に経営構造改革プランを説明したヤマトホールディングスの長尾裕社長。より詳細な計画は2021年1月に改めて発表する予定だという(撮影:梅谷秀司)

EC関係の荷物は、販促キャンペーンの影響などから時期によって取扱量の変動が大きい。競合の佐川急便や日本郵便は外部のパートナー企業に配送委託し、荷物量に応じた柔軟な配送体制を敷くことでコストをコントロールしている。

ヤマトも配送委託を活用することで、取扱量の変動に柔軟に対応できる体制を構築する狙いがある。新配送サービスは今年4月から一部エリアで順次開始していく。ただ、足元では大手EC事業者が自前物流網の構築に乗り出しており、ヤマトのデリバリー事業強化が思惑通り進むかは不透明だ。

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