プロが語る2020年の投資戦略「4つのポイント」 一部の高利回り債や高配当株は選別投資を

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現在、割安で魅力的な金融資産としては、アジアの高利回り社債やインフレ率の低い新興国の現地通貨建て国債、欧米や新興国の株式などがある。株式では、アメリカ株よりもヨーロッパ株のほうに上昇余地の点で妙味があり、新興国の中でも景気回復の兆しが鮮明なアジアの株式が好ましい。

逆に割高なのが、アメリカやドイツ、日本など先進国の国債。財政政策も景気刺激の方向へ動きつつあり、国債価格にはマイナスに作用する。

米中貿易摩擦については、第一段階の合意で緩和の兆しが見える。摩擦解消までは先は長いが、前進はしている。より大きな懸念は、アメリカの強硬姿勢によるWTO(世界貿易機関)の機能不全だ。

備蓄増やシェール増産で原油は高騰しにくい

アメリカとイランの対立激化は、短期的には原油価格への影響が懸念されるが、かつてに比べて影響度は低下している。背景には、中国やアメリカなどの戦略的な備蓄積み上げやアメリカのシェールオイル増産がある。そのため、アメリカとイランの対立が原油価格の高騰につながりにくい。

ブレグジットについても、離脱協定の合意で前進があった。今後、イギリスとEUの間の貿易協定がうまくいかなければ、イギリスにとってEUは重要な輸出先だけに影響は大きい。ただ、EUにとってイギリスは輸出先としてそれほど重要ではない。グローバルな経済成長への影響に関しても、過度な懸念は必要ない。

アメリカ大統領選の結果を予測するのは困難だ。共和党が勝てば、減税、規制緩和の方向。民主党が勝てば、グリーン・ニューディールと規制強化の方向。だが、経済成長については両党ともに重視している。そのため、大統領選の結果がどうなってもアメリカ経済への影響に大きな違いはないだろう。

アメリカの景気後退リスクについては、イールドカーブよりもクレジット市場のスプレッドのほうが適切な指標と考えられ、これで見ると年内に景気後退に陥るリスクは10%以下と低い。

日本株は日本国債に比べると妙味が大きい。日本の金融・財政政策は引き続き景気刺激的であり、海外の循環的回復も日本経済の支援材料となる。日本企業は膨大な現預金を保有しており、自社株買いや増配の余地が大きい。長期的にガバナンスの改善も期待される。逆に、ガバナンスが間違った方向に進むことがリスクとなる。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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