ノブコブ徳井「副業で稼ぐ芸人が激増した理由」 僕らの人生はダウンタウンに変えられた
さらに、徳井は「面白いの定義が変わってきたことで、本質性を出しやすくなったような気がする」と付言する。
「俺たちより上の世代までは、やっぱりボケてナンボっていう感覚が強かった。実際、松本さんが“サブい”という言葉を使い始めて以降、あの時代は『面白い=サブくない』という認識があったと思うんです。
だから、芸人が本気で歌を歌う、本気で絵を描くなんてことは、『なにマジでやってんの?』というサブい(=面白くない)こととして認識されていた。俺たちも、『サブい』って言われたくないから、面白いことをしなければという強迫観念みたいなものがあったように思いますよ」
レギュラー番組の終了から気づいたこと
ところが、今や芸人が本格的なバンドを組むことは珍しくないし、正統派な小説を出版することも珍しくなくなった。料理も作れば、クイズも作る、何でもアリだ。
「西野が絵本作家としてデビューしたときや(2009年)、品川さんが『ドロップ』で監督・脚本を務めたとき(2008年)って、まだ『芸人なのに何やってんの?』という風潮があったからこそ、イジられていましたよね。でも、そういう道を切り開く人たちがいたからこその、(渡辺)直美のニューヨーク留学を経てのパフォーマーとしての成功や、又吉君の『火花』での芥川賞受賞だと、俺は思う」
渡辺の短期NY留学は2014年、又吉の『火花』は『文學界』2015年2月号に掲載された。もはや芸人の副業をイジる風潮はない。やりたいことに全力で取り込む芸人の姿は何も珍しいことではなくなっている。2010年代中頃を境に芸人の副業が注目され始めたのは、「偶然じゃないと思う」と、彼は答える。
「俺たち平成ノブシコブシも出演していた『ピカルの定理』(フジテレビ系・2010年10月~2013年9月)が終わったんですよね。終わったことによって、コント番組でしたから、面白いことを考えることから解放された感じがしました。
しかも、世の中はネット文化が浸透し始めていて、テレビが求める“面白い”が、必ずしも世の中の“面白い”と一致しなくなってきた。フジテレビ伝統の深夜からプライムタイム、そしてゴールデンタイムへと成長していくコント番組が終了するって、そういうことだったと思うんですよ。ああ、“面白い”の定義が変わった、広がったんだなって」
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