ミニスカ導入で一悶着、スカイマークの誤算 エアバス「A330」導入も再延期
スカイマークの見込み違いは、ミニスカへの反応だけではない。A330による羽田―福岡線の就航開始はもともと3月だった。その後4月18日に延期したが、今回、整備規定の不備を理由として5月末に再延期したのだ。
A330は、スカイマークが現在使用する米ボーイング社の「B737」型機(全席エコノミーで177席)より一回り大きな双通路の中型旅客機だ。通常サイズのエコノミー席なら最大440席収容できるが、スカイマークは271席にとどめ、その分、全席を「グリーンシート」と呼ぶ広めのシートとした。
グリーンシートは、前の座席との間隔が約96.5センチメートル。一般的な格安航空会社(LCC)のそれよりも23センチメートル以上、JALや全日本空輸(ANA)のエコノミー席と比べても約18センチメートル広く、ひじかけも大きい。脚を投げ出せるレッグレストも標準装備している。
現在、スカイマークの普通運賃設定は、実質的に大手の半額近い水準。グリーンシート移行後も、これまでと同等の価格優位性を維持する。最新鋭機でなく、登場から20年近く経ったA330を選んだのは、性能の割に値段が安く、最新鋭機よりも「約4割導入安いコストで導入できる」(西久保社長)からである。
競争激化で赤字に転落
国内航空市場は、消耗戦ともいえる状態にある。スカイマークは1月末、今年度に入って2度目となる業績見通しの下方修正を発表した。今2013年度の営業損益は20億円の赤字と、2008年度以来5期ぶりに営業赤字に転落する見込みとなっている(前期は46億円の営業黒字)。
苦戦要因の1つはコスト高だ。航空会社は機材(航空機)や燃料などをドル建てで調達しており、為替が急激に円安へ振れた影響で、大幅にコストが増加している。
加えて深刻なのが、競合他社との競争激化だ。特に、成田空港を発着する路線が苦戦している。2012年からジェットスター・ジャパンやバニラエア(旧エアアジア・ジャパン)といったLCC(ローコストキャリア)が、国内主要都市と成田を結ぶ便を就航。スカイマークは大手航空会社の半額程度の運賃で勝負してきたが、LCCはそれをさらに下回る運賃で攻勢をかけている。
あおりを食ったスカイマークの成田発着路線は搭乗率、平均単価ともに悪化。一部路線は撤退した。また、昨年春に羽田の国内線発着枠が拡大され、各社が増便を打ち出したことで、ビジネスマンや観光客の移動が多い「ドル箱」と呼ばれる東京―福岡、沖縄、札幌といった路線でも、供給過剰気味となっている。
スカイマークにとって、A330はこの消耗戦から抜け出すための切り札だ。LCCは運賃の安さが最大の武器だが、その分、多くの乗客を乗せる必要があるため、一般的な航空会社の機材と比べると、機内での快適性は劣る。スカイマークは大手の半額近い運賃を維持しつつ、水準以上の快適性も打ち出すことで、大手にもLCCにもない、新たな立ち位置を獲得しようとしている。それだけに、導入の再延期は頭の痛いところだ。
ミニスカとA330。発表時のインパクトが大きかっただけに、良くも悪くもスカイマークへの注目度は高まっている。きちんと顧客獲得へとつなげていけるのか。本当の勝負はこれからだ。
(撮影:尾形文繁)
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