演奏に順番待ち、江古田「駅ピアノ」は誰が弾く? 西武鉄道や地元大学の熱意で実現
江古田駅にピアノを置くという構想が固まるとデザイン監修を務める日本大学芸術学部が、学生や地域住民を中心としたワークショップで決まったデザイン案の総仕上げを行った。江古田の魅力をあぶり出した写真を使い、床には五線譜のデザインを施した。
駅をデザインするならば、駅改札内、改札外を問わず全体に施したいと思うのが自然な流れだが、江古田駅には事情があった。駅舎の建て替えに伴い、改札から外の南口と北口を結ぶ自由通路や階段は練馬区の所有となっているのだ。それでも、ここまでやるからには改札の内も外も一体化した「駅デザイン」を検討したい。
渡邉さんと矢吹さんの思いは練馬区に届いた。「江古田の街のためになることなら存分にやってください」。
かくして駅の改札内外にも階段にも学生たちをはじめとしたワークショップ参加者の遊び心あふれるデザインが躍ることになった。そして子どもも音符にあわせて踊っている。
すべての風が江古田駅にとっていい方向に吹いた。武蔵野音楽大学によってピアノが置かれることになった。日本大学芸術学部の監修によって駅のデザインがなされた。その記事を書き、そしてクリスマスシーズンの装飾をしてくれたのは武蔵大学の学生たちだ。
これまでほぼ没交渉だった地元の3大学が、ピアノを契機に仲間になった。
若い世代に江古田の思い出を作ってほしい
「学生の方たちが江古田に少しでもいい思い出を持ってもらえればうれしい」
西武鉄道の狙いはそこにもあった。
渡邉さんは言う。「もともと江古田駅の3学連携という発想のベースにあったのは少子高齢化です。一般的に進学のタイミングにあわせて西武線沿線に住んでくださる学生さんは多いのですが、その後、沿線を離れていく方が少なくありません。
でも就職、結婚、それ以降のライフステージにおいても西武線沿線に住み続けてほしい。離れても戻ってきてほしい。そんな思いを込めて若い方に江古田の街って何だか楽しかったよねって、そんな思い出を作ってほしいのです」。
江古田を盛り上げるための仕掛けが整った2019年10月19日、江古田駅のデザインとピアノのお披露目セレモニーが開かれた。弾き初めはピアノを提供した武蔵野音楽大学の学生が快く引き受けてくれた。一方で、西武鉄道社内でも江古田駅にピアノが設置されるのを楽しみにしている社員が多く、できれば会社からも弾ける人を出したい、という話になった。
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